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 ちなみになんだけど、カントも『人倫の形而上学』という本の第2部「徳論の形而上学的基礎論」第17節で次のように論じているのよね。

「被造物のなかで、理性はないけれども生命はもっている部分についていえば、動物を暴力的にまた残酷に扱うことは、人間の自分自身に対する義務に、(無生物の場合より)はるかに痛切に背いている。というのは、そういう扱いをすることによって、人間のうちにある、動物の苦痛に対する同情が鈍らされ、そのために他の人間との関係における道徳性にきわめて役に立つ自然的素資質が弱められ、次第次第に根絶やしにされるからである」(『世界の名著 39 カント』605頁、森口美都男、佐藤全弘訳)

 で、これはもうええねん。「この箇所がどこやったかなあ」と思って、先にChatGPT 4oに尋ねたら、いちおう該当箇所は正しく答えるんだけど、どうもChatGPTが言うような文章が見当たらないのよね。続く。

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 続き。最初は第17節にこんな記述があってというのだけど、翻訳を見ても該当の箇所が見つけられない。前後の文章を示せと言ってもごまかす。そのうちアカデミー版(カント研究者はこのアカデミー版全集をもとに引用箇所を示すのが慣例)の頁数まで出し始める。ほんで、手元にあるPhB(Philosophische Bibliothek、いわゆる哲学文庫版)を参照すると、そんな記述はどこにもない。AIハルシネーションだった。こんなにも平然と嘘をつくというのは、本当に怖いなと。

ChatGPT 4oの回答:
該当箇所:『道徳形而上学』第2部「徳の教義(Tugendlehre)」第17節(アカデミー版 VI:443)
„Wir haben also gegen die Thiere keine unmittelbare Pflicht; Thierquälerei ist also an sich nicht unrecht, sondern nur in Ansehung des Menschen, weil sie in ihm die Menschlichkeit abstumpft...“

カント『人倫の形而上学』の本文。ドイツ語が書かれている。
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