寝ていたらお布団の中から人の声が聞こえてきた。何かの拍子にスマホが誰かと通話状態になったのかなと思って毛布のなかを探ってみると、それはエアコンのリモコンだった。
驚く間もなくまた人の声が聞こえてきた。「危険なガスが検知されました」と言っている。しかも自動音声ではなさそうだ。「もしかしたら近くに誰もいないのかなあ」とぼやく声が聞こえてきて、それを最後に声は途絶えてしまった。
それでも右下のボタンが黄緑色に点灯していて、それがついている限りはどこかにつながっているようなので、なんとかそれを消そうと私は停止ボタンを押したり他のボタンを押してみたりするのだけど、うんともすんとも言わない。電池を抜けばきっとうまくいくのだろうけど、そうするとさっき話していたのが誰で、何が起こっていたのかを確かめる術がなくなってしまいそうで、電池は抜かない方がいいような気がする。
そこで私は思い切ってリモコンに向かって話しかけてみることにした。
「すみません」
「あ、よかった。誰かいたんですね」