【再掲】Butterfield, D., The Early Textual History of Lucretius' De Rerum Natura (Cambridge, 2013)
ルクレーティウスの主要写本はO, Q, 断片的に伝わるGVU(著者はSという記号でこれらをまとめることを提案する)という9世紀頃のものと,ポッジョ・ブラッチョリーニによって発見された写本から発するイタリア写本群(Itali)に分けられ,これらのうちQとSは共通の本(ψ)から由来すると考えられるが,イタリア写本群とその他の写本との関係について色々議論がおこなわれてきた.
著者を含め最近の研究者は概ねイタリア写本群がOから派生したと考えていて,その場合これらのイタリア写本群はルクレーティウスのテクストを再建する上で独立した権威は持たないことになる.