Tarrant, R.J., 'The Reader as Author: Collaborative Interpolation in Latin Poetry', Grant, J.N.(ed.), Editing Greek and Latin Texts, New York, Ams Press, 1989: 121-162.
ラテン文学における改竄(interpolation)の発生メカニズムを扱った論文.著者は改竄を(1)訂正(emendation),(2)註解(annotation),(3)共作あるいは競作(collaboration, emulation)の3つのカテゴリに分けて考えることを提案する.特に第三の区分では読者が「共著者」(co-author)のごとき役割を果たしていると考えられる.
この研究は著者のOCT版『変身物語』の校訂にも活かされ,また現在ルクレーティウスのトイプナー版を準備しているDeufertがこの詩人の改竄問題(Pseudo-Lukrezisches im Lukrez, 1996)について論じる際にも参照した議論なので重要である.