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読了:
木頭〔原作〕+孫呱〔作画〕『藍渓鎮 羅小黒戦記外伝』第4巻(翻訳協力:熊一欣/KADOKAWA,2024年2月/原書:木头〔原作〕+孙呱〔作画〕《蓝溪镇》第4巻(江苏凤凰文艺出版社,2023年4月)

中国語で話の筋をなんとか、なんとなく追ってたやつの答え合わせをできるときが来た!

連載でさらにちょっと先まで見てしまっているので、いま改めて読むと「あ、この台詞は……このときから老君は……」みたいなとこもあって、しみじみする。

前半パートでは、清凝の「晴れ姿」とその笑顔の裏のまっすぐな決意、彼女を慕う藍渓鎮の住人たちに対する誠意、消化できない恋心などなどを、説明的な言葉を費やすことなく、間接的な状況と絵で伝えてくるのが巧いな、と。

そしてこのあたりの老君や玄離とのひとときも、嵐の前の最後の平穏、みたいになってしまうんだよな。この巻の後半は怒涛の展開。那伽は本当に怖いキャラだよー。

一方、「あの」哪吒さまがついに本作でも登場。この時代のファッションもお似合いです。同じ火系の「わんこ」玄離とのやりとりが好き。

七刀の過去も、初読時だいぶ意表を突かれました。

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読了:
ますむらひろし『銀河鉄道の夜 四次稿編』第3巻(原作:宮沢賢治,1934年/有限会社風呂猫,2023年5月/底本:『宮沢賢治全集』第7巻,筑摩書房,1995年)

去年2巻まで読んでたものの続き。ジョバンニのポケットに入ってた切符が実はすごい通行券だと言われた直後から。

おしゃべりな鳥捕りのことを邪魔だと思ってしまって後悔したり、乗客の女の子と楽しそうに話が弾んでいるカンパネルラにいらいらして悲しくなったり――というジョバンニの心の機微の部分、小説で読んだときは、カンパネルラへの思い入れがなんだか生々しいな、という感想を抱いたのですが、ますむらさんの猫キャラだと、その寂しさと向き合うさまが、ただただ純粋さを感じられて愛おしいような気がしてくる。話の輪に入れず窓の外を見ているときの表情とかさー。

本作は「四次稿編」ではあるのだけれど、この巻ではイレギュラー措置をとって、原作の3次稿以降では削除されている、銀河鉄道の窓の外をイルカの大群が泳ぐシーンが注釈をつけたうえで挿入されています。ここの見開きカラーが息を呑むほど素敵(彩色担当は増村昭子さん)。描いてくださってよかったです。

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ドイツ現代史研究の取り返しのつかない過ち――パレスチナ問題軽視の背景 京都大学人文科学研究所准教授・藤原辰史(2024年2月23日)
chosyu-journal.jp/heiwa/29293

 
“そして歴史学そのものが、人間の足跡と尊厳を簡単に消すことができる暴力装置であることへの自覚の希薄さがある。その政治的緊張感のなさは、ドイツ現代史に限った話ではない。”

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ドイツ現代史研究の取り返しのつかない過ち――パレスチナ問題軽視の背景 京都大学人文科学研究所准教授・藤原辰史
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明後日は来月……明後日は来月……明後日は来月……くっ。それでも、うるう年でなかったら、明日からもう来月だったんだからな?

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読了:
ますむらひろし『銀河鉄道の夜 四次稿編』第4巻(原作:宮沢賢治,1934年/有限会社風呂猫,2023年10月/底本:『宮沢賢治全集』第7巻,筑摩書房,1995年)

最終巻。全4巻分を描き上げるのに約8年かかっているそうです。

沈んだ船から乗車してきた3人との別れの前の「天上へなんか行かなくたっていゝぢゃないか」のところ、小説ではそのあとの台詞も同じカギカッコのなかで一気に書かれているのでするする一気に読んじゃってたんだけど、この漫画ではこのひとことだけを切り出して、1ページまるまる使った大ゴマで言わせている。ここのジョバンニの、澄みきったまっすぐな瞳のインパクトがすごい。「お、おう」って、けおされる(作中でこれを言われたキャラクターはすぐに反論するのに)。

列車の中からカンパネルラがいなくなっていることに気付いたあとの慟哭の場面も、原作では2~3行で表されている嘆きのようすを、複数ページにわたって激しく丁寧に描写しています。

〔つづく〕

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〔つづき〕

そしてこの巻では、ベースとなっている原作4次稿にはない、3次稿からの展開が46ページにわたって入っています。泣いているジョバンニの傍らの座席に、いつのまにか大きな黒い帽子をかぶった男性が座っている。

ここ、原作であとからカットされちゃったのも、実は個人的には、僭越ながら分かるような気はするのです。私はこのシーンがないバージョンで最初に読んでいるので、それで刷り込みを受けているだけかもしれないんだけど。

物語のテーマにかかわるのであろう文言がたくさん盛り込まれた場面ではあるのですが、反面、ちょっと説教っぽくて説明過多というか、ないほうが引き締まった感じがするというか。あと、ないほうが読者に委ねられる部分が多く、読み手への信頼を感じるというか。

でも、こうやって漫画で見せてもらうと、この謎に満ちた男の存在、そして彼の説話から喚起されるいろんなイメージが、とっても「絵」として強いな、と。この部分にさまざまな角度から説得力を与えて可視化しているますむら先生はやっぱりすごいや。

〔つづく〕

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〔つづき〕

巻末あとがきも、この漫画版がいまのかたちになるまでの原作考察や、1980年代に『銀河鉄道の夜』を漫画化した際の、天沢退二郎先生とのやりとり、現在は賢治の手稿が行方不明となっている、原稿用紙1枚分の別バージョンの展開を漫画化してみたものなど、読み応えたっぷりです。

これだけのエネルギーを注ぎ込んだ漫画化作品を、よくぞ描き切って読者に共有してくださった、と感謝の念に堪えません。

ところで、去年の冬から春にかけて、八王子市夢美術館において「ますむらひろしの銀河鉄道の夜―前編」と題し、あの時点で刊行されていた1巻と2巻の原画展が開催されていましたよね。
yumebi.com/acv108.html

「前編」と言ってたからには、当然「後編」もあると思っていていいですよね? 3巻と4巻の原画展もぜひぜひやってほしいです。

〔了〕

ますむらひろしの銀河鉄道の夜-前編 | 過去の展覧会 | 八王子市夢美術館
八王子市夢美術館で開催されていた「ますむらひろしの銀河鉄道の夜 前編」展の入口にあった大きい看板。きらびやかなショウウィンドウを覗き込むジョバンニの後姿のイラストと、2023年1月28日から3月26日までの会期表示がある。
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あ。さっきの『銀河鉄道の夜 四次稿編』4巻の感想メモ
mstdn.jp/@narano/1120069800977

3巻の感想からつなげてスレッド(って言っていいの? ツリー?)にしようと思っていたのに、忘れてました……。

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ならの (@narano@mstdn.jp)
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中国で昨日まで開催されていた大々的なウィンタースポーツ大会「中华人民共和国第十四届冬季运动会」のフィギュアスケート女子シングル部門において金メダルを獲得した、金书贤さん12歳の演技動画を見ました(よく分かっていないのですが、中国の国内大会は、年齢が下でも条件を満たせばシニア大会に参加できるのだと前に教えてもらった)。

たいへん将来有望でこのまますくすく育ってね、という感じなのですが。それはそれとして、お名前が。

书贤……書賢(シューシエン)って。命名したときのご両親はおそらく、この子が長じてアスリートになるなんてまっっったく思ってなかったのでは? みたいな字面で、ちょっと面白みを感じてしまった。人生は予想外の連続ですよね(と、勝手に思いを馳せる)。

とにかく、このまま大きな怪我とかなく順調にどんどん経験を積んで国際大会に出てきてね。

 
12-year-old Jin Shuxian wins figure skating women's singles title at 14th National Winter Games
youtube.com/watch?v=0ehoHSW3MK

Attach YouTube
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ぐーぐるの「うるう年」ロゴ、なんでこれ? って、2秒くらい分かってなかった。Leap year だからか。ぴょーん!
google.com/logos/doodles/2024/

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ブログ更新:2024年2月に読んだものメモまとめ
days.mushi.pepper.jp/?eid=1262

■武田砂鉄『なんかいやな感じ』(講談社,2023年9月)
■多崎礼『煌夜祭』(中央公論新社,2023年11月/初出:中央公論社,2006年7月/底本:中公文庫,2013年5月)
■Andy Weir "The Martian: Lost Sols"(ウェブ公開,2024年2月)

●墨香銅臭〔原作〕+STARember〔漫画〕『天官賜福』第1巻(訳:本多由枝/ソニー・ミュージックソリューションズ,2024年2月/原本初出:墨香铜臭+STARember《天管赐福》哔哩哔哩漫画,2019年~)
●木頭〔原作〕+孫呱〔作画〕『藍渓鎮 羅小黒戦記外伝』第4巻(翻訳協力:熊一欣/KADOKAWA,2024年2月/原書:木头〔原作〕+孙呱〔作画〕《罗小黑战记·蓝溪镇》第4巻(江苏凤凰文艺出版社,2023年4月)
●ますむらひろし『銀河鉄道の夜 四次稿編』第3巻・4巻(原作:宮沢賢治,1934年/有限会社風呂猫,2023年5月・10月/底本:『宮沢賢治全集』第7巻,筑摩書房,1995年)

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去年刊行された本が対象の、誰でもネットから投票できる「翻訳ミステリー読者賞」という企画の話題がたびたび流れてくるので、今年もなんか票を入れるか! と自分の読書記録をチェックしたんですが、見事に、該当する本が、1冊も、い っ さ つ も! なかったです。

年末にカウントしたとき、読了した翻訳書の数自体はそれなりにあった気がしたけど、中国語→英語の翻訳書を勘定に入れてたせいだったし。和訳書のなかで「あ、これミステリの範疇かも」と思って確認したものは、どれも古い本だったし。

「積んでる本を消化するぜ」とか言ってると、こういう「祭」には参加できなくなるなあ。まあ仕方ない。量が読めないので、その時々に、いちばん読みたい気持ちが盛り上がっている本を優先していくしか。

 
↓投票期間は今日まで!

第12回翻訳ミステリー読者賞のご案内
hm-dokushokai.amebaownd.com/po

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【更新】第12回翻訳ミステリー読者賞のご案内