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米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』(創元推理文庫,2024年4月)

「小市民」シリーズ本編完結! 前作「秋期」から(あいだに番外短編はありましたが)実に15年、待ってました。

それだけのブランクがあっても(過去作を復習しとこうと思ってたのに結局いきなりこっちを開いちゃった)、読みはじめればすんなりと違和感ゼロだったので自分でもちょっとびっくり。お久しぶりの知り合いに「わ、元気だったー?」って近づくような感じ。

まあ、元気じゃなかったんですけど。衝撃の序章。

そして小鳩くんの回想でついに明かされる、小佐内さんとの出会いの状況などに好奇心を満たされているうちに、案の定、文中の手がかりをスルーしてました。そうでしたこれは推理小説。

小佐内さんは、回想でも現在でも、やっぱり小佐内さんらしさ全開で、誤魔化しなく自分を貫いていました。

高校卒業でいろんなことが必然的に変わってしまいますが、きっと成長はしてもそれぞれの本来的な性質は変わらないふたりは、今後も看過できぬ引っかかりに遭遇しながら生きていくのだろうと信じています。たとえその活動が読者の目に触れることはなくても。

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数日前から旧Twitterで、最近になって医学論文方面でdelveという「マイナーな英単語」がよく使われるようになっていて、それはChatGPTの影響によるもの、というポストが拡散されている。

 
(このポスト ↓
twitter.com/umiyuki_ai/status/
 

え、文系人間の私は、昔からdelve普通に使うなあ? 鞄の中に手を突っ込んで物を探したりするのもdelveじゃない? と首をかしげたところでいきなり脳内に思い出が広がった。私がこの単語を初めて意識したのはおそらく、子供の頃に人気だった(私も好きだった)The Three Investigatorsという少年探偵団シリーズのなかの、1冊においてでありました。

たぶん、第7作のこれ。リンク先は1984年刊行バージョンだけど、初版は60年代に出ているはず。

Robert Arthur "The Mystery of the Fiery Eye"
amazon.co.jp/Mystery-Fiery-Thr

〔つづく〕

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〔つづき〕

宝探しの話で、暗号の解釈が浅くてダミーの隠し場所に釣られると、"Delve deeply. Time is of the essence."(深く掘り下げろ、時間は貴重だ)と、正しい謎解きを急かす言葉が残されており……という場面があったのです。フレーズとして超カッコよくない!? と、ここでテンションが上がったものでした。

というわけで、1980年代前後に米国で読書習慣のある小学生をやってた探偵もの好き人間みんなdelveを使う説を提唱します(そんな乱暴な)。

って、これは冗談ですけど、それはともかくとして、いまどんどん記憶がよみがえってきてて、あのシリーズ本当に楽しかったなあ、と心の中でじたばたしてる。

日本でも偕成社から「カリフォルニア少年探偵団」シリーズとして、1970年代に数冊だけ翻訳が出ていたようですが(大人になってからネット検索で知った情報)、盛り上がらなかったのは残念。

私は当時、帰国するまでに30冊くらいは読んだはず。最終的には43巻まで出てたらしい(これもネットで知った)。

それにしても、いまdelveを使うと、AI作文だと思われてしまうのか?