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 (チェルノブイリ)原発で働く人々は、原発を「コーヒーメーカー」「湯沸かし器」と呼んでいました。彼らは原発で5日間働いた後、両親の元に戻ってシャベルで芋掘りをするのです。彼らの意識には二つの世界が存在し、その多くは特に疑問を抱くことはありませんでした。

 ソ連原子力界の権威、アレクサンドロフ氏は「原発は全く安全だ。(モスクワ中心部の)赤の広場に設置してもよい」と言っていました。これは、人間が自ら発明したテクノロジーに追いついていなかったことを示しています。

 そして、今も同様です。人工知能(AI)のような新しい技術が発展するかもしれませんが、人間はそれをどう扱うべきかわかっていません。

 人間は今、二つの現実を生きています。一方は、人々と街が破壊される、全く中世的なウクライナでの戦争。他方は、人工知能や宇宙船――。

 人間の意識が到底受け入れられない、この二つの世界に、私たちは生きているのです。

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同意


 原子力をコントロールできないのはロシア人だけではありません。福島はどうでしょうか?

 「チェルノブイリの祈り」の邦訳出版(98年)の関係で日本を訪れた際、とある原発職員らに「事故が起きたのはロシア人がいい加減だからですよ」と言われたのを覚えています。その後、私たちは何を見たでしょうか。

 これまで(深刻な事故が起こったのは)チェルノブイリと福島だけですが、これは未来の問題なのです。私たちは問題に対処できていない。(事故は)また繰り返されます。

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どうかん


問題は、学校や大学における人文科目が非常に少ないことです。人間性についての思索や宗教的知識、心の問題……。こうしたものが足りない。人文科目は減る一方で、これは人間にとって非常に危険です。人間は常に立ち止まって考えなければなりません。

 人間は実用性を重んじる文明をつくってしまいましたが、私たちを救うのは人道的な人間、人文的な知識に他なりません。人を殺してはならない、それは人間の仕事ではないということを、話し合わなくてはなりません。

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 野蛮人とはウクライナ(の前線)で撃ったり命令を実行したりする人々ではなく、戦争を始め、戦争を指揮している人々のことです。彼らは大学の卒業証書を携え、どこからやって来たのでしょうか。私は、何が野蛮人を生んだのかを理解しようとしています。哲学的な意味で、いったい何が起こったのか。

 彼らは人文的で、宗教的で、真に哲学的な人間ではありません。こうした「野蛮人の時代」の訪れを、私はほぼ確信しています。

 これは新たな中世です。再び戦車が走り、街が破壊され、人々が殺され、抑圧される。こんなことはもう起こりえないと思っていました。

 しっかりと考えなくてはなりません。私たちが今どんな時代にいるのかということを。

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>ただ、大事なのは、どんな独裁者も、時を止められないということです。どんなファシズムも、時を止めることはできない。彼らは勝てないでしょう。ただ、それまでにとても長い時間がかかるかもしれません。ああ、結末を見届けるにはとても長生きしなくては……。

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これが日本の未来にならないことを祈っている。

>私たちベラルーシ人も、(ウクライナのように民主化運動を)試みましたが、失敗しました。ベラルーシの革命(20~21年の民主化運動)で、広場には若者を中心に数十万人もの人々が集まったものの、ルカシェンコを倒すのに十分な数ではなかった。この運動の指導者の一人である私は、平和的な手段でうまくいくと思っていました。でも、平和的な道に失敗しました。失敗しました……。

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 ――プーチン氏はロシア(ソ連)がヒトラーを倒したことは世界に多大なる貢献をしたはずなのに、それに見合う尊敬が西側から得られていないと不満を抱いています。

 私がモスクワを訪れたとき、何度か5月9日の(独ソ戦の)戦勝記念日に居合わせました。その光景には、何か恐ろしいものがありました。「必要ならば、もう一度勝つ」という考えが、人々に浸透していました。彼らは敵を見つける必要があり、そして、今その敵が見つかったのです。

 「我々が世界に勝つのだ」「我々は敬われていない」「偉大なロシア」。恐ろしいことです。過去に「偉大なドイツ」や「偉大なセルビア」が何をもたらしたかと振り返れば、流血だけです。彼らは時代に取り残され、私たちを過去に引き戻しています。

 ゴルバチョフは自分の考えが破壊され、彼自身が裏切り者と見なされているのを見て、どんなに悲しみながら死んでいったでしょう。あの時代、私たちは本当に大きな世界(国際社会)に入り込み、みんなと同じように生きようとしました。でも、過去が勝ったのです。残念ながら……。

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日本がこっちに行かないことを只只祈っている


私の取材で、複数の人が、二度と戦争も矯正収容所も戻ってこない、みんな過去のことだと思っていたと言っていました。残念ながら今日でも、こういったことはまだ歴史ではないのです。

 (ベラルーシの反政権デモに参加した)ある若い女性は、「私は収容所とかそうしたものの全ては、既に古めかしい過去の歴史だと思っていました。でも、私が革命(デモ)に参加して逮捕された時、(ソ連時代の)本に書いてあることと同じような仕打ちを受けたのです。ポリ袋を頭からかぶせられて、首を絞められました。鉛筆で乳首を刺されました」と話していました。

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>私が話した大勢のロシア人は、ロシアはペレストロイカの後、自国が辱められ、貧しくなった、尊敬されていないと感じていました。(ソ連崩壊後の混乱期は)食べ物も仕事もなかったのです。この貧困が行き着く先はファシズムです。貧しければ、良い教育を受けることはできません。

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>近しい人を亡くした人、絶望の淵に立っている人のよりどころとなるのは、まさに日常そのものだけなのです。例えば、孫の頭をなでること。朝のコーヒーの1杯でもよいでしょう。そんな、何か人間らしいことによって、人は救われるのです。

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「野蛮人の時代」が再び訪れた それでも独裁者は時を止められない
asahi.com/articles/ASQDT23CPQD

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「野蛮人の時代」が再び訪れた それでも独裁者は時を止められない:朝日新聞デジタル
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日本がこっちに行かないことを本当に心から祈っている


2016年にアレクシエービッチさんが来日した際、インタビューする機会がありました。「プーチン政権下のロシアをどう見ていますか」と問いかけると、こんな答えが返ってきました。
 
〝ロシアは重篤な状態で、世界にとって危険です。プーチンは問題を「力」で解決し ようとし、核の使用の可能性も口にしました。

国民はペレストロイカの時にさげすまれ、冷戦に敗れたと感じました。「今はロシアの時代だが、敵に囲まれている」と思い込んでいる。ロシアは過去に日常的だった状態に戻りました。「意識の軍国化」です。ロシアほど、人々が軽々と戦争について語る国はありません。テレビには連日、新しい軍用機や軍艦が映ります。驚くべきは国民が再び強い軍になったと喜んでいることです〟

2016年の言葉を今になって振り返ると、「意識の軍国化」が浸透していき、はじけるまでの時間のことを考えてしまいました。

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高津祐典さんの 朝日新聞デジタル

【視点】2016年にアレクシエービッチさんが来日した際、インタビューする機会がありました。「プーチン政権下のロシアをどう見ていま…
asahi.com/articles/ASQDT23CBQD

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人から獣がはい出したウクライナの戦争 アレクシエービッチの使命:朝日新聞デジタル
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日本の汚染水放出と完全に相似形


ロシアで最近行われた世論調査からうかがえるのは、テレビのプロパガンダでは覆い隠せない戦争の実態に薄々気付き、厭戦感をつのらせながらも、だからといって民の力で戦争を終わらせる道すじも見えず、結局、現政権についていくしかない、そうしたロシア市民の諦観だ。プーチン政権が11月に実施した非公表の世論調査で、侵攻継続を求める割合は25%にとどまり、7月の57%と比べて半分以下に落ち込んでいたことが、独立系メディア、メドゥーザの調査で判明した。その一方で、独立系世論調査機関レバダセンターが今月行った調査では、70%以上の人々がロシア軍の活動を「確実に」または「ほぼ」支持しており、64%が「国は正しい方向に進んでいる」と考えていると回答した。

多くの市民が戦争の継続を望んでいない現状でも、政権の独断で不当な戦争を続けられる。市民はそうした現実への対応として、現政権が正しい決定を行っているのだと信じ続ける。

これが民主主義がない国の戦争の実態なのだろう。

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三牧聖子さん(@SeikoMimaki)の 朝日新聞デジタル

【視点】以前アレクシエービッチ氏は、軍事侵攻以降のロシア社会を「テレビと冷蔵庫の対立」と表現し、食糧がなくなり冷蔵庫が空になれば…
asahi.com/articles/ASQDT23CBQD

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人から獣がはい出したウクライナの戦争 アレクシエービッチの使命:朝日新聞デジタル
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こわいよねTV
日本もこっちに行きそう


彼らは何が起こっているのか理解していません。多くの人々がテレビの言うことを信じているのです。

 あるウクライナ兵が、(侵攻後に)捕虜にしたロシア兵に「母親に電話して実情を伝えれば解放してやる」と言いました。電話で「ママ、ここにはナチはいない」と話したロシア兵に、母親は「何を言ってるの。誰に吹き込まれたの」と叫んだ。母親が口にしたのはテレビが流す内容でした。

 こんなロシア人女性もいました。「ええ私の姉妹はハリコフ(ハルキウ)に住んでいます」。ハリコフは何度も爆撃された街です。「それでも、私は自分の大統領を信じています」。残念ながら、テレビは大きな力です。私たちは甘く見ていました……。

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asahi.com/articles/ASQDT23CVQD
私はかつて取材した人で、「戦争は美しい」と言った男性をよく覚えています。彼は「夜の野原で砲弾が飛んでいる姿はとても美しい。殺された人間だけじゃない。美しい瞬間があるんだ」と言うのです。のどを刺すときの(刺された人の)うめき声について、ほとんど詩的と言ってもよい表現で語りました。戦争には人間にとって様々な試練があります。人間の心を支配してしまうようなものがあるのです。

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「孤独の時代」の私たち 人間性を失わないためのよりどころを探そう:朝日新聞デジタル
2023-08-22 11:01:23 ꙮ itochan ꙮの投稿 itochan@misskey.io
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おー
おこっぺで牧場してる人に話を伺ったときも話題に出てたヤツが。
stv.jp/news/stvnews/bl7cvs0000

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【速報】OSO18駆除と判明 釧路町でハンター駆除のクマ DNA鑑定で特定 知らずに駆除か | 北海道 | ニュース | STV札幌テレビ
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ケータイニュースにオススメされる
潰れる前に行ってみたいなかに太郎
dailyportalz.jp/kiji/kani_taro

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まさかこの店が現役営業していたなんて!500円のかに飯の店「かに太郎」、その攻略談
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撤収

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