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加藤直樹『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』(ころから,2014年3月)
ちょうど100年前の関東大震災の直後、混乱のなかで広まった犯罪や暴動の無根拠な噂に基づき、多数の朝鮮人が殺されました。本書はこの事件に関する証言や記録を集め、調査による解説を加えたノンフィクション作品。
時系列に沿ってまとめられた事実関係を見ると、思っていた以上に、警察や軍も最初のうちは流言蜚語を信じて動いており、それが一般市民で構成された自警団の勢いを加速して、あとから抑止しようとしても追いつかないほどにしてしまっている。偽りの大義名分を与えた体制側の責任は重い。
そして現在の日本社会で、ちょっと他人の血が流れているのを見てもギョッとして目をそむけたくなるような感覚が特に異端とはされない生活をしていると想像しがたくはあるけれども、極限状態で集団化すると、人はそんなに迷いなく生きてる他人の身体に対して残虐になれるものなのかということに絶望的な気持ちが湧く。
〔つづく〕