icon


周密『BLと中国 耽美(Dan mei)をめぐる社会情勢と魅力』(ひつじ書房,2024年3月)

近年、日本でも翻訳や紹介が増えてきた中国のBL系コンテンツについて、本国での発展の経緯や社会情勢とのかかわりを分析した研究書。

このジャンルの名称「耽美 dānměi」自体が日本語からの借用であるくらいに、日本のサブカルからの影響が強いはずの分野なのだけれど、必然的に論考は、耽美ジャンルにとって逆風となっている中国政府の方針との兼ね合いが焦点に。良し悪し関係なく、その要素があるからこそコンテンツが独自の進化を遂げている。

個人的にハッとしたのは、当局の観点において、昔から同性愛が受け入れられていたというような内容の歴史ものコンテンツが非推奨なのは、現代中国社会のほうが過去より進歩的だよ、という優越性を強調できなくなるからだという指摘。そっちの発想かー!

あと、明確なレーティング基準を定めずに、手間暇かけて個別に審査する検閲制度を残しているのはなぜか、そういった制度を踏まえ、コンテンツ提供側がどのような方策をとってきたか、という解説もあります。

〔つづく〕

icon

〔つづき〕

いきなり自分語りをしますが、私はたまたま観たBL原作の中国アニメ(ブロマンスものに改変)にハマって、原作小説にも手を出すようになりました。でも主役ふたりの恋が進展する重要シーンで「それよか本筋のほうが気になる」などと思ってしまい、あとから「いや、ジャンル的にむしろ本筋はそこだろ」と、それを失念していた自分に衝撃を受けたりしていました。

どうもBL素養に乏しい者が読むと、傾向として複雑なプロットとか、脇キャラたちの掘り下げとか、舞台設定の面白さとかがページをめくらせる主な推進力になっていて、直截的なロマンスの比重はそれほど大きくない気がするのです。

そして本書によると、まさにその、恋愛・性愛以外が物語の前面に押し出される作風自体が、ジャンルの存続戦略でもあるというのです。なるほど……。

自分が惹きつけられてきた作品の特徴が、上からの制約の結果として花開いたものだと思うと複雑ではある。創作は自由におこなわれてほしいので。

ただ同時に正直なところ、日々変容する現実の社会情勢と物語の表出の仕方が絡み合うさまに対するこのような読み解きを、興味深く感じてもいます。

〔了〕

icon

【二ホンタンポポ(在来種)とセイヨウタンポポ(外来種)の見分け方】
weathernews.jp/s/topics/202404

 
↑この記事を読んだところだったので、外出先で見かけたタンポポを「お、この形状は在来種なのではないか」とか思わずチェックして写真まで撮ってしまったのですが、記事には

“里山のような昔ながらの土地に分布しているのが二ホンタンポポです。昔から環境が変化しにくい寺社仏閣の境内や昔からの田畑で見られます”

とも書いてあり、自信がなくなってきた。わりと新興住宅地っぽいとこの道端に生えてたやつなので。

Web site image
二ホンタンポポ(在来種)とセイヨウタンポポ(外来種)の見分け方
草むらのなかに生えたタンポポの花3輪を横から撮った写真。
Attach image