#読書
周密『BLと中国 耽美(Dan mei)をめぐる社会情勢と魅力』(ひつじ書房,2024年3月)
近年、日本でも翻訳や紹介が増えてきた中国のBL系コンテンツについて、本国での発展の経緯や社会情勢とのかかわりを分析した研究書。
このジャンルの名称「耽美 dānměi」自体が日本語からの借用であるくらいに、日本のサブカルからの影響が強いはずの分野なのだけれど、必然的に論考は、耽美ジャンルにとって逆風となっている中国政府の方針との兼ね合いが焦点に。良し悪し関係なく、その要素があるからこそコンテンツが独自の進化を遂げている。
個人的にハッとしたのは、当局の観点において、昔から同性愛が受け入れられていたというような内容の歴史ものコンテンツが非推奨なのは、現代中国社会のほうが過去より進歩的だよ、という優越性を強調できなくなるからだという指摘。そっちの発想かー!
あと、明確なレーティング基準を定めずに、手間暇かけて個別に審査する検閲制度を残しているのはなぜか、そういった制度を踏まえ、コンテンツ提供側がどのような方策をとってきたか、という解説もあります。
〔つづく〕