風俗壊乱ようやく読み終わったけど、めちゃおもろかったな
本のハイライトは漱石の自然主義との関わりにおける評価(政治的抵抗の根拠になりうるものとしての個人の内面)が一つ、もう一つは大逆事件だと思う。戦中の検閲というか弾圧、「なんとなくすごそう」くらいに思ってたのが、「やばすぎる」という感想になった。
日本の美術史って、それを組織しようとした当初から「海外の眼」で見られた自己像が意識されているから、内在的な発展史として記述しづらい形になってしまっているんだな。
印象派から後期印象派にかけて、大衆芸術としての浮世絵を媒介にして反アカデミズムの流れが形成されていたのに、それが日本に紹介されるときには白樺派の個人主義・精神主義的傾向を通じて紹介されたので浮世絵の影響はまったく排除されてしまった、というのはそりゃそうか。当時の国内での浮世絵状況は白樺派みたいなエリート集団に好まれるものではなかった。
白樺派の柳宗悦がのちに民衆芸術運動としての民藝に向かったのはアーツアンドクラフツ運動の影響だけど、この流れは歪みがあってちょっとおもしろいな。柳がエリーティズムから脱することはたぶんなかったけど。
当時の日本のエリートにとって、西洋文化には西洋固有の特質がある(東洋には東洋の固有性がある)という思い込みがつよくあって、文化がハイブリッドに形成されるという観念はほぼなかったんだろう。柳の民藝を見る眼にもそれはある。
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