今日から4月。形の上ではもう中学生だ。中学受験で第一志望校に合格し、期待と緊張が入り交じる心境で迎える春は、特別だ。
親の携帯電話が鳴った。すると、親は、「学校からだって。健一、来てくれる?」といい、電話を代わった。すると、「新しく高崎くんの担任になる山口です。」といった。「今日の入学オリエンテーション、どうしちゃったの?来れない?」と心配そうな声で山口先生は聞いた。「え…?」私は真っ白になった。入学式は4月8日で、それまでは春休みのはず…。「今日、ですか?」「はい。今日は入学オリエンテーションで、学校に来ることになっているはずですよ。」「ええ〜!私、どうしたらいいですか……?」「今から来られる?全体のオリエンテーションは終わってしまうから、職員室に直接来て欲しい。えーと、職員室の場所は校門の守衛さんに聞いてね。」「あ、はい、分かりました。」「できるだけ早く来て欲しいけど、遅くなっても何とかなるから、事故に遭わないように慌てずに来てくださいね。」
私は急いで支度をして、学校に向かった。
…。
職員室にたどり着くと、山口先生は待ち構えていて、「高崎君だね?」と手を振った。「あ、はい。」そこから、先生はいろいろなことを説明してくれた。学校のホームページの検索欄に「新入生」と入力すると、新入生向けホームページが現れ、そこに日程や連絡事項が書かれていること。正式な入学式は8日だが、それまでに大量の教材の配布や、学力確認試験が改めて行われること。校舎の一部の区画は、危険な動物が棲み着いているため封鎖されているので、入ろうとしないこと。私は、想像以上にとんでもない学校に来てしまったと思った。
そして、先生が今日の分の確認試験をするのでついてくるようにいった。先生は、校舎の封鎖エリアに向かった。封鎖テープの前にくると、トランシーバーで誰かと話し始めた。「こちら山口。封鎖エリアCの132番教室、1時間ほど確保可能か?」「えーこちら司令部、封鎖エリアCの132番教室、1時間確保可能です。」「それでは確保願います。」「了解。」
「ここでちょっと待っててください。」と先生がいった。しばらくすると、透明な盾を持った迷彩色の服を着こんだ「部隊」、そう、部隊としか表現できない5人組がやってきた。まさかと思って見ていると、その5人組は封鎖エリアに入り、1番手前の教室に入っていた。すると否や、「パーン!」と銃声が鳴り、隊員が何やら緊迫した声を上げた。教室のドアがまた開き、中から隊員が規則正しくでてきた。「確保完了。」「お疲れ様。」
「それでは教室に入ろう」と教師は規制線をくぐり抜けながら言った。私は意を決してついて行った。
教師は、封筒から紙を取り出していった。「今日は漢字テストです」
先生と私だけの教室でテストが始まった。
(1) アヤしい電話がかかってくる
(2) イソいで学校に行く
(3) ショウインシツで話を聞く
(4) フシギな封鎖エリア
(5) 大げさな迷彩色のブタイ
(6) エイプリルフールのうそにダマされた
ん…これって……?
顔を上げると、先生は満面の笑みでこちらをみていた。
「今日は…?エイプリルフール's Day!!!」
「えーーーー!?」
「入学オリエンテーションも、封鎖エリアも全部噓でした。」
「うそ…」
「噓は噓であると見抜けないと、この学校に通うのは難しい」
「学校からの電話はネットの情報じゃねーよ」