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墨香銅臭『天官賜福』第2巻
(訳:鄭穎馨/フロンティアワークス,2023年2月/底本:墨香銅臭《天官賜福 二》平心出版,2021年3月/原文初出:墨香铜臭《天管赐福》北京晋江原创网络科技有限公司 晋江文学城,2017-2018年)

突出した人間がやがて神になって信仰される道教的な世界観だけど、個々の神さま=神官は主人公の謝憐含めみんな現実の中国神話とはかぶらないオリジナルなんだな(と、いまさら確認)。

天帝・君吾からの任務がきっかけで、謝憐と同僚(っていうのか)の神さまの過去の因縁や、名前だけはずっと出てきていた、いかれた青鬼・戚容の素性が明らかになり、ひとしきりの騒乱の末にあわや――という場面から、突如として物語は800年前に飛ぶ。

第1巻では、ある種の諦念と達観による柔軟性を身に着けた、温和なたたずまいの神として登場した謝憐だが、この頃はまだ、善良で優秀だけれども若く世間知らずな人間の皇太子。傲慢なほど純粋な正義感に燃えてもいる。

〔つづく〕

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〔つづき〕

天帝の目に留まり神さまにされてからも、その姿勢は変わらない。しかし、ひとつひとつの局面で、自分が正しいと思う選択を貫いていった結果が、予想外に悪い方向へと転がっていく。一身に民衆の愛と信仰を集める「花冠武神」だったのに、天界の掟に背いてでも守ろうとしたものを守れない絶望のなか、気が付けば人界でも失望と非難の対象になっている。

神さまになるには若過ぎたのかもしれない謝憐が、意志さえあればすべてを分け隔てなく自分の力で救えると信じて、かえってなにも救えていない状況に陥っていく過程が畳みかけるように緻密に説得力をもって描かれており、とてもつらい巻。

一方、1巻から出てきているあのひとですよね? って感じの薄幸少年との出会いもあって、ここからなにがどうなってああ育つんだ? と興味を引きつけてくる。謝憐のそばに常に控えている従者ふたりも複雑にキャラ立ってて、ほんとの知り合いみたいに感じるようになりました。でも1巻を読んだかぎりでは、このあと彼らとも決裂するんだよなって思うと、続きを知るのが怖い。

〔了〕

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『天官賜福』は結局、台湾版(全6巻)と米国版(全7巻予定で5巻まで刊行済み)と日本版(たぶん全6巻予定でいま2巻まで刊行済み)を買ってしまっているので、室内スペースがたいへん圧迫されつつあります。

第3巻以降は、台湾版をちらちら参照しつつ、英語版メインで読み進めることになると思います。和訳版もどうせ出たら買うんだけどね……でも和訳は1巻と2巻のあいだに7ヶ月あったし次がいつ出るか分からんからね……2巻すごいところで終わったからね……(読むのが遅いわりに堪え性がない)。

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