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「イメージの魔術師 エロール・ル・カイン展」八王子市夢美術館
yumebi.com/exb.html

昨日は、これを観てきました。

絵本作家エロール・ル・カイン(1941-1989)については、『いばらひめ』や『おどる12人のおひめさま』あたりの、シック寄りの色調なのに華やかさもある微細に描き込まれた美麗な画風の印象が、私のなかでは強かったのです。

だけど物語の内容によってはもっとシンプルで力強さが前面に出たような絵もあるし、遺作となった『魔術師キャッツ』なんかは、コミカルで洒脱。同じく晩年の作『ぼくのいもうとみなかった?』は、ほんわかとかわいらしいタッチで、私は言われなきゃこれ見てもエロール・ル・カイン作だとは気付けなかったと思う。

シンガポール生まれで、幼い頃の一時期インドに移住(日本軍の侵攻を逃れて避難)してたということは、この美術展に興味を持ってから初めて知りました。

英国在住で西洋の物語(じゃない作品もあるけど)に絵を付けていても、なんとなくアジアっぽさに通ずるセンスを感じるなあと前々から思っていたのですが、そのへんが影響しているのかもですね。

〔つづく〕

「夢美セレクション展」 | 展覧会 | 八王子市夢美術館
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〔つづき〕

そういえば絵本作家としてしか認識していなかったので、BBCのためにアニメを制作していたこともあるという話は意外でした。そもそも単身で渡英したきっかけが、自主制作のアニメーションを評価されて勉強のためにロンドンに呼んでもらったことなのだ。それが15歳のとき(1956年)。早熟!(反面、47歳で亡くなってしまったというのは、こないだ展覧会を観たビアズリーと同じく、早世すぎるけど……。)

それにしたって、どの原画も、描線や塗りの美しさ、迷いの見えなさが凄まじかった。これ本当に肉筆なんですよね? って、まじまじと凝視してしまった。印刷されたものが完成品という前提で描かれたものなのに、修正跡とかほぼないのね。

下絵や、描き上げたけど最終的に出版された本には使われなかった絵なども展示されていて、なぜこれがボツに? とか考えるのも面白かったです。未邦訳の絵本もけっこうあるんだな。

そして、またしても使う当てのないクリアファイルとかチケットホルダーとかを買ってしまったよ……。いいのです鑑賞用だから。

〔了〕

八王子市夢美術館の入口の写真。ベージュ色の立て看板が置かれている。看板の中央には、エロール・ル・カインがインドの祖母の家に身を寄せていた幼少期を思い出して描いた絵が配置されており、右側に縦書きで「イメージの魔術師」、左側に「エロール・ル・カイン」の文字が入っている。絵の上側に「Errol Le Cain」、下側に「2025年4月5日(土)-6月1日(日)」と会期を記した文字も見える。
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美術展のフライヤー(『アーサー王の剣』からの絵が使われている)、物販で購入したクリアファイル(『いばらひめ』の絵)、チケットホルダー(『魔術師キャッツ』の絵)の写真。
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