ちびっこの頃、ときおり妙に自信ありげに間違ったことを言う我が亡母(そう、かつてライラックを指して「あれはラベンダー」と断言したあの母です)が、「(普通のニラは細長い葉っぱ部分を食べるものだが)ハナニラは花を食べる」と教えてくれました。
食べられません。園芸種のハナニラ(ヒガンバナ科ネギ亜科ハナニラ属)には毒があるのです。
ちなみに、つぼみの部分を食用にできる品種のニラ(ヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属)も花ニラと呼ばれることがありますが、あのとき母が指差していたのは公園に咲いていた白い花だったと記憶しているので、ほぼ確実に園芸種でしょう。食べられません。
しかしそれとは別に、いま私がここでお伝えしたいのは、当時「ハナニラは花を食べる」と言われた幼い私が、それを「人間がハナニラの花を食べる」ではなく、「この植物が花を食べる」と解釈したことです。
食虫植物というものがあるのだから、食花植物もあるんだなって、すんなり納得して、聞き返して母の真意を確認することもなかったのです。
そしてだいぶあとになるまで「共食いするお花……こわいよう」と、怯えていたのです。ハナニラさんたち、すまなかった。