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桜庭一樹『読まれる覚悟』(ちくまプリマー新書,2025年1月)

デビューから四半世紀以上、直木賞もとったベテラン作家の桜庭さんが、不特定多数の読者にリーチしたときに起こりうるさまざまなトラブルを挙げながら心構えを。

とは言うものの、作家としての心得を「こうすべき」と上から目線で指導するのではなく、桜庭さんご自身はこういうスタンスでやっている、と穏やかに開示してくださる感じ。プリマー新書っていうのは、お若いかた向けのレーベルなのかな? 語り口がやさしい。

ライトノベルから大人向けの娯楽小説、純文学系まで幅広く活動なさっている桜庭さんだからこそ、それぞれのジャンル内でのことを経験に基づいて語れています。

当方は「読む側」なので、誤読されたままネットにコメントを書かれたり、明記してないことを明記したように言われたりしたという桜庭さんの体験談に震えました。私だってやらかしているかもしれないよなあ。

〔つづく〕

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〔つづき〕

いつも、なにかの感想をネットに上げるときには、見当はずれなことを言ってるのではと、こわごわ送信ボタンを押しているのです。あらためて、できるだけ慎重を期さなければと気を引き締めました(傍から見れば、まだまだ隙だらけだろうけど)。

数年前に桜庭さんが、私小説をメジャーな媒体で誤読気味にレビューされてご家族の実生活に影響が出かねないからと抗戦してらした件についても、終盤に言及があります。

近年になってさらに思うところがあったことも書かれていました。そして、最新長編『名探偵の有害性』が、あとから提起された問題点に対してのアンサーなのだとも。おお。当時の戦いの顛末を書いた私小説も、最新長編も拝読しましたが、そんなふうに接続させて受け止められてはいなかったなあ、私は。でも同じかたが執筆しているのだから、もちろん、影響とつながりはあるのですよね。

読み手からのフィードバックに対してオープンでいようと心がけ、生じた疑問から逃げずに向き合おうとする姿勢に誠実さを感じます。

読み手の側としても、行ったり来たりしながら自分のスタンスを問いつづけていけたらいいな。

〔了〕