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『Flow』(2024年、ラトビア・フランス・ベルギー)
flow-movie.com/

週末に観てきました。ラトビアのアニメーション作家ギンツ・ジルバロディスの長編第2作。

前作『Away』と同じく、言語による説明が一切なくて観客の想像にゆだねる部分が多い。でも、あまりつじつまを求めて解釈をこねくりまわしてもかえって面白くなくなっちゃうかもな、見えるものをそのまま受け入れるのもアリかもな、みたいなことも感じました。

人類が築いたと思われる文明の名残はあるけど動物しかいなくて、大洪水で地表の大部分が水没している世界で、黒猫がたまたま流れてきたボートに乗り込み、乗り合わせたほかの動物たちと一緒に旅をしていく。

種族が違う動物同士でどこまで意思の疎通ができているのかとか、この世界の動物たちの知能ってどの程度なのかとか、すべて不明なまま、とにかく猫と一緒に流されるような気持ちで見続けることになる。

〔つづく〕

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映画『Flow』公式サイト
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〔つづき〕

動物たちのキャラクターデザインが、リアル寄りのようでいて、けっこう目の表情とか分かりやすくてちゃんと演技がついているので、主人公の猫にだいぶシンクロしてしまう。心細さとか、溺れる恐怖とか、ほかの動物への警戒とか……。

でもこれが身につまされるということは、人間も現実世界で、同じように先行きや他者の思惑が見えない不安を感じながら日々、あっぷあっぷと必死に息継ぎしつつ生き抜いているんじゃないかねえなんてことも連想してしまったり。

水をはじめとする自然や、人工物の廃墟などの描写がダイナミックで美しい。前作もそうだったけど、カメラワークと色彩の鮮やかさが圧巻。特に「水」の描写に迫力があって。

実は(昨日もここでちらっと書いたけど)途中で、子供の頃に溺れかけたときの身体感覚がまざまざとよみがえってちょっとしんどくなってしまったりもしました。公式サイトにちゃんと警告文があるので、見通しの甘かった自分が悪い。でもそれくらいの迫真度だってことです。しかも、映像としては本当にきれいなの。きれいだからこそ、怖かったのかもしれないけど。

〔了〕