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角野栄子『角野栄子 エブリデイマジック』(平凡社,2019年8月)

あらかじめ謝っておきますが、国際的な賞も授与された世界的児童文学作家である1935年生まれの角野さん、白状すると私のなかでは「高齢女性界のファッションリーダー!」みたいなイメージのほうが強くて。作品はあまり読み込めていないので、こういう角野ワールド解説本を手に取る資格はなかったかもしれないのです。すみません。

でも、本当にいつもどんな媒体でお写真を見ても、すっごく素敵じゃないですか。本書でも、きれいにお手入れされた白髪に似合うビビッドな色使いとキュートなシルエットのお洋服や、ポップな眼鏡コレクションのページにテンションが上がります。

一方、これまでの人生が語られるパートには、5歳でお母さまを亡くされたこと、戦時中の学童疎開、敵性言語だったはずの英語が戦後は必須科目になり、やがて大学では英米文学を専攻したこと、海外旅行がまだ自由化されていなかった時代に冒険心からご夫婦で自費移民として船でブラジルに渡ったことなどが記されており、そういった経験が創作の土壌となっていったんだなあとしみじみします。

〔つづく〕

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〔つづき〕

角野さんが旅先から持ち帰った、さまざまなアイテムが紹介されるページもわくわくします。私は子供の頃、角野さんの作品『ズボン船長さんの話』がとても好きだったので、船長さんのおうちの、ひとつひとつに物語がある世界各地からの「宝物」たちを連想しちゃいました。

執筆生活の具体的なお話も示唆的。とにかく書く。アイデアが浮かばないときでも寝っころがったりせず、机の前には座りつづけて、絵を描いたり礼状を書いたり、なにかしら手を動かして身体のコンディションを保つ。ストイック。アスリートみたいですね。

でも創作に限らず、いろんなことが、わりとそういうものかもしれないな、と。放棄しないでいると、とりあえずなにかは残る。今日はもう無理ですわってときに、だらけずにいることは正直なところいまの私には難しいけれど、心がけとしては意識しておきたい。

本書が出版されたのは6年近く前ですが、角野さんの公式SNSアカウントを見ると、御年90歳の現在も相変わらずおしゃれに元気にお過ごしのよう。これからも理想の後期高齢者像のひとつとして、晴れやかな笑顔を崇めさせてほしい。また作品も読みます。

〔了〕