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冷たくなった飲み物を温めたいのだが、リモートワーク中の夫から妨害電波で作業ができなくなるとクレームが入るので電子レンジ使えない……(さっきお昼ご飯の下ごしらえに電子レンジを使ったら叫ばれた)。

私は自分のデバイスのwi-fi設定をみんな5GHz帯にしちゃってるので、自分には影響なくて完全に失念していたが、2.4GHz帯に参入してくるのは電子レンジとルーターだけではないのな。なにやってるのか知らんけど。

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グレッグ・ジラード+イアン・ランボット『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』(訳:尾原美保,監修:吉田一郎/イースト・プレス,2004年2月/原書:Greg Girard & Ian Lambot "City of Darkness: Life in Kowloon Walled City" Watermark Publications Ltd., 2003年〔親本1993年〕)

今年に入ってから、日本でも香港映画としては異例のヒットを飛ばしている『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(原題:九龍城寨之圍城/本国公開2024年)。私はとりわけ、舞台となった九龍城砦のセットの綿密な作り込みに圧倒されました。

1993年から1994年にかけて解体がおこなわれ、いまはもう存在しない場所。建築基準など全無視で乱造され互いに寄りかかるように増築が重ねられ密集して巨大な迷路めいたひとかたまりとなった建物群。

〔つづく〕

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〔つづき〕

犯罪の温床というイメージが広まっていたけれど、他方では貧しい老若男女がさまざまな職種で地道に生活し、所帯を持ち、ひとつの「街」を形成しているところであった、というのが映画でも克明に描かれていました。

本書は、現実にそうやって九龍城砦で暮らしていた人たちや関わりのあった人たちに個別に取材し、立ち退きの少し前の時期に話を聞き取っていったインタビュー写真集です。映画の主要キャラクターがやっていたような理容師、焼き豚屋や魚肉団子屋、医師や歯科医、商店主、各種製造業者などなど。

ページをめくっていると、映画における九龍城砦の雰囲気の再現度は、本当にすごかったことが分かる。そして、当時ここでは混沌としたなかに独自のゆるやかな秩序が形成されており、全体で見れば城外と比べても犯罪発生率は案外(特に末期には)高くなかったことも。

とはいえ構造は複雑化を極め、老朽化が激しく、衛生状態は劣悪で、電気系統の整備も後手後手になっており。ちょっとした不運が、あっというまに大惨事につながっていたかもしれません。局所的な治安の問題も含め、政府が解体にこだわったことも理解はできます。

〔つづく〕

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〔つづき〕

理解はできるけど、このインタビュー集では、住民の不安や不満も大いに語られています。それぞれ立場が違うので、取り壊しに対する受け止め方にグラデーションがある。また、もともと低費用で商売を立ち上げ維持していけることが魅力で住み着いた人たちにとって、政府が査定して決めた補償額では、同じ仕事を新たに外で始めなおすには到底足りてないケースが多い。

ここに写っている人たちは、その後どうなったのでしょうか。解体から約30年が過ぎた現在、すでに亡くなっている人もいるでしょう。できるだけたくさんの人たちが、城外でも納得のいくかたちで居場所を見つけられたのでありますように。

とにかく、どの写真を見ても、かつてたしかにこの特異的な場所が存在し、この人たちが生活をしていたのだという実感が押し寄せてきます。

〔了〕