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ロバート・コルカー『統合失調症の一族 遺伝か、環境か』(訳:柴田裕之/早川書房,2022年9月/原書:Robert Kolker "Hidden Valley Road: Inside the Mind of an American Family" 2020)

ノンフィクション。1945年から1965年までのあいだに生まれた12人の子供たちのうち、息子6名が統合失調症の診断を受けた一家の軌跡。発病して世間とずれてしまっている者にも、罹患しておらず社会とのつながりを保ったまま、家族によってもたらされる困難に振り回される者にも、それぞれの苦しみがある。

時代的に価値観がいまと違うのは大前提で、この12人きょうだいの両親が当時の基準でも保守寄りのカトリック信者夫婦で、それが状況の悪化につながっている面があるようにも感じる。しかし家族メンバーがおのおの過酷な事態に次々と見舞われても、逝去以外の理由で決定的に縁切りして離脱する者がおらず、最終的にはそれなりにポジティブなかたちで家族の絆が保たれるのもまた、もともとそういう家庭であったからなのか、とも思うし……。

〔つづく〕

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〔つづき〕

本書では存命しているひとりひとりに取材して家族の歴史を丹念に追うとともに、そのときどきの精神疾患治療の実態および研究の実情が解説される。そしてやがて、この一家の人々が研究者と出会い、遺伝子データの提供に同意したことから、紆余曲折を経て重要な発見がなされていく。

まだまだ解明されていない点が多い病気ではあるのだろうけど、いまよりずっと不明なことが多く患者の人権も考えられていなかったところから、多少なりとも状況が変わってきた時代の流れと、この一家のたどってきた数十年の道のりが並行して進み、互いにリンクして、彼らの存在そのものがこの研究分野の発展に貢献もしてきたことに感慨を覚える。

発症しなかった家族メンバーはみんな葛藤と懊悩の末に、自分を守り社会のなかで生きていく方策をそれぞれのやり方で選び取っている。なかでも、いちばん割を喰ったとも言える末っ子の女性が、どう考えても児童虐待だろうという環境に放置されて育った過去を乗り越え、ほかの家族を介助したり実務的なサポートをしたりすることで自分も再生していこうとする姿勢が印象的。なんと強いひとなのか。

〔了〕

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「ルレクチエ」という、初めて聞くもののジャム(たぶん)の小瓶をいただき、ジャムが作れるからにはきっと果物なのだろうと思いつつ、くれた人からは「お店で珍しいものだと言われたので買った」以外の情報を得られなかったので、検索してみた。

……洋ナシの品種名かー! Wikipediaによると Le Lectier と書くらしい。「ル」と「レクチエ」のあいだに区切りがあるんだな。

新潟市|西洋なし「ル レクチエ」
city.niigata.lg.jp/business/sh

JA全農|新潟のル レクチエ
zennoh.or.jp/nt/rurekuche/

 
わりと真っ当なところなはずのウェブサイトのURL文字列が rekute とか rurekuche で、まったく原語の綴りが考慮されてない。いいのか。

とにかく、そういう品種の西洋ナシがあることを初めて知りました。