#読書
安野モヨコ『還暦不行届』(祥伝社,2023年11月)
漫画家である安野先生が、庵野秀明監督との生活を綴ったエッセイ集。
2005年の『監督不行届』では、それぞれ自分の世界を持っているふたりが夫婦として仲良く一緒に暮らす、驚嘆に満ちた日々を楽しく垣間見させてもらったのですが、あれから18年。
やっぱりいまでも監督は安野先生にとって、興味の尽きない、愛おしく新鮮な存在。そして長年連れ添った現在では、お互い変わったところも歩み寄ったところもあり。
これを読むかぎりでは、現実処理能力が高く周囲を慮らずにはいられないのは確実に安野先生のほうなので、同じクリエイター同士なのに、先生だけがお世話係と「兼業」みたいになっちゃって、日々の生活面では、どうしても先生側に大きな負担がかかっている気がしてしまう。
でも巻末の監督インタビューまで読むと、そんな懸念は余計なことで、このおふたりのバランスはそれで取れているのかなあ、とも。もうね、「圧巻の伏線回収!!」みたいなインタビューだと思っちゃったんですよ。庵野監督もまた、創作者・安野モヨコの才能の、ストレートな理解者なのだ。