#読書
織守きょうや『キスに煙』(文藝春秋,2024年1月)
なんとなくミステリーとかサスペンスとか、そっち系の作者だというイメージがあって、本作でもわりと序盤で人死にがあるので、そういうものを予想して読んでいたけど、純然たるラブストーリーでした。カバー折り返しの「恋情」という語が入った惹句を、素直に受け止めてよかったのだ。
ただ描かれるのは、性的指向が一致しているとは言えない者同士が、「才能」を取っ掛かりとして相手に傾倒し、指向がすれ違ったまま互いを唯一無二と位置付けている、みたいな関係なので、そこは情動の行き着く先がなかなか見えてこないような、ひねりが入っている感じ。ところできみたち(特に主役の片方)、ドラスティックな行動に走る前に、報・連・相は大事だよ!
それはともかく、本作は表紙に併記されている英語タイトルが "Kiss and Cry and Lie" となっており、読む前から分かる人には分かるように、フィギュアスケーターたち(現役の人と引退済みの人)の話です。で、実在するスケーターの名前なんかも、外野キャラの会話の中には出てきちゃう。
〔つづく〕