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フランシス・ハーディング『呪いを解く者』(訳:児玉敦子/東京創元社,2023年11月/原書:Frances Hardinge "Unraveller" Macmillan Children's Books, 2022年)

人間の居住地の外に〈原野〉と呼ばれる不可思議な沼の森があり、人知を超える力と独自のことわりを持つ種々の生き物が住んでいる世界。

憎しみにとらわれた人間は、ときに原野の住人によって、恨む相手に呪いをかける能力を付与される。その呪いを解く力を持つ少年と、かつて呪われていた少女が、大人たちの思惑に巻き込まれて不確かな状況に翻弄されつつ、そして自分たちにも跳ね返ってくる負の部分とも向き合いながら、見過ごせない事態をなんとかしようと頑張る冒険譚。

底が知れない沼の森のダークな奥深さに恐れを感じ、同時に惹きつけられる。隣接する異界に対応すべく人間側で案出されているシステムの作り込みも面白い。

消化できない思いが、身のうちに抱え込まれる「呪いの卵」として体感的にイメージできてしまい、胸に迫る。ただ、困難ではあってもその取扱いに道筋が提示されることで読後には希望が。