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若竹千佐子『かっかどるどるどぅ』(河出書房新社,2023年5月)
前作『おらおらでひとりいぐも』が、ひたすらにひとりの高齢女性の生活と内面を突き詰めていくように進んでいったのに対して、今作は1話ごとに主役が変わってゆき、個人の問題と社会の問題が地続きであることが浮き彫りにされる全6話の群像劇。
それぞれの登場人物が、それぞれの事情で、否応なしにいまのこの社会のメインストリームからはぐれて孤立と絶望に追い込まれるなか、なんとか踏み出した一歩でかろうじて互いにつながり、流れに抗う意志を持ち、やがてそれまで接点のなかった者同士で軽やかに連帯が発生する。
語り口のリズムの軽快さ、あえて文章の作りを標準からずらしてきた瞬間に心に飛び込んでくる感情の生々しさに技巧を感じる。とりわけ前作に引き続き文字として記された東北弁の力強さが印象的。
『万葉集』の和歌からの断片を用いて、物語の内容を間接的にしか表現しない各話タイトルも奥ゆかしくお洒落(特に、みんなの居場所を提供する「吉野さん」が登場する第4話)。