#読書
王谷晶『君の六月は凍る』(朝日新聞出版,2023年6月)
タイトルからして6月中に読むべきだよなって思っていたのに、気づいたらすでに7月に入っていたのですが、1ページ目を見ると7月に入ってからの回想だったのでセーフ(なのか?)。
語り手をはじめとして、すべての登場人物に固有の名前がない。性別も年齢も、はっきりしない。いつ、どこで起こったことなのかも、特定できない。読みながらたしかに脳裡にはっきりと映像は浮かび、感情はトレースできるのだけれど、それは文章から喚起される私自身のもともと持っていたイメージでしかなく、読みながら「あ、でもそれは書いてない」と、何度もブレーキをかけた。綱渡りのようにニュートラルな解釈を保って読み進めることは難しく、しかしそれが奇妙に面白くもあった。自分のなかにあるバイアスがかえって輪郭を持ってくるようで。
〔つづく〕