主人公は裁判所書記官の青年。
5年前に父親が性犯罪で有罪判決を受けていて、証拠があるにも関わらず最後まで無罪を主張していた父親に厚かましさすら感じて軽蔑していた。
ある日、閉廷後の法廷で意識を失って目が覚めると、5年前に父親が裁かれた期日にタイムスリップしていた。
タイムスリップをする内、過去の父親の判決は冤罪だった可能性が浮上し、過去と未来を変えながら真相に迫っていく…というストーリー。
関連事件がいくつもあったり、いろんな時間軸の話が行き交うので頭が混乱するけど、それが楽しかった。
作者の方が現役の弁護士という事で、耳馴染みのない法律用語にも噛み砕いた説明があって雑学にもなった。
法科学分野にも監修の方が付いていて("民間の科捜研"と呼ばれる法科学鑑定研究所の方)、DNA鑑定の過程に関する説明もあったりして興味深かった。
リーガル・ミステリも好きだし、法科学を題材にしたミステリも好きだから、どっちも嬉しい。
リアリティのある法廷描写や法科学鑑定を利用した犯罪は実際にあるんじゃないのか?と思ってしまう程だけれど、そこにタイムスリップというファンタジー要素が同居している。
徹頭徹尾リアリティを追求するミステリを好む方には向かないと思うが、自分のように現実世界にひとつまみの非現実を加えた物語が好きな方は好きなのではないかと思う。
この手の法科学を利用した犯罪の話を読むと、doctorという英単語を動詞で使うと「不正に改竄する」という意味になることを思い出す。
(面白いなと思っている訳の1つで、創作のネタに使ったことがある)
大学生の頃に一度だけ裁判の傍聴に行った事があるのだけど、その時は正直なところほとんどやり取りの内容を理解できなかった。
裁判員裁判を選んで傍聴すればもう少し噛み砕いた進行だったのかなと思う。
また機会があれば行ってみたいけれど、平日の時間を自由に使える大学生だからこそ行けたんだよなあ…。
しかし医師の知念実希人先生もそうだし、この五十嵐先生も弁護士だし、他のご職業に従事されていながら本を執筆なさる方はどんな頭と時間の使い方をしているんだろう…。
1日が24時間じゃないのか……? #感想