個別性の協調→個別性の強調
Abry, J.-H., 'Présence de Lucrèce: Les Astronomiques de Manilius', Présence de Lucrèce: Aactes du colloque tenu à Tours (3-5 décembre 1998), Tours, 1999: 111-128.
Lührの学位請求論文(Ratio und Fatum, 1969)で展開された,反ルクレーティウス詩人としてのマーニーリウス像を踏まえながら両詩人の関係を探る論文.
Abryはマーニーリウスをストア派の思想潮流の中に位置づけながらも,『アストロノミカ』が哲学的な思想表明を眼目としているわけではないことに正しく注意を向けている.
作中に現れる原子論に関する用語や,春の情景や疫病の流行といった主題にはルクレーティウスの模倣が明らかに認められる.
マーニーリウスはアタラクシア《平常心》というルクレーティウスと同一の目標をしかし彼とは異なる思想により目指したのであり,ルクレーティウスからの借用・模倣にはfonction dialectiqueがあるという指摘は興味深い.