#読書
劉慈欣『白亜紀往事』(訳:大森望、古市雅子/早川書房,2023年11月/原書:刘慈欣《当恐龙遇上蚂蚁》2004年6月〔別題《白垩纪往事》〕)
前に英訳で読んでた短編の長尺版。発表はこっちが先だそう。てっきり逆かと!
たまたま蟻と恐竜による初の共同作業が成立する序盤と、長い年月の末に両者が最終決戦になだれ込む後半の展開は、短編と同じ。
本作では、蟻と恐竜が意思を疎通させ相互補完で高度な白亜紀文明を築き上げていった過程や、国家間・種族間の対立の歴史が、より具体的に語られる。
登場キャラクターが蟻と恐竜なのもあって、武力で世界の均衡を保とうとする愚かさを嗤う寓話にも思えるし、突飛なネタを力業の理屈でつなげた楽しく壮大なホラ話にも見える。
脳が小さく想像力に乏しい一方、団結力の強い蟻たちが、個々を犠牲にしてでも一丸となって目的を果たしていく描写が映像的でだいぶ怖い。
あと、英訳ではとあるものの名前が "Leviathan" および "Luna" とされており原文が気になっていましたが、中国語の漢字名をそのまま使っているだろうこの和訳版では「海神」「明月」でした。なるほど。