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2017年にきこ書房から刊行されていたキャスリーン・フリン『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(訳:村井理子)が、『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』というタイトルになり、今月29日に新潮文庫から改めて発売されるみたいです。
shinchosha.co.jp/book/240421/

素の “ダメ女” がカギカッコ付きの “「ダメ女」” になるだけで、ちょっと印象変わるよね。コンサバティヴな世間は料理の苦手な女性を「ダメ女」と呼ぶかもしれないけど別にそんなことないでしょ的な。少しホッとした。

まあ原題(Katherine Flinn "The Kitchen Counter Cooking School: How a Few Simple Lessons Transformed Nine Culinary Novices into Fearless Cooks")にはそもそも “ダメ” っていう表現がないので、やっぱり微妙に、もやっとはするけど。内容は面白かったので!

↓ 単行本読了時の感想
days.mushi.pepper.jp/?eid=1262

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キャスリーン・フリン、村井理子/訳 『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 | 新潮社
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2017年10月に読んだものメモ | 虫のいい日々
ブログに掲載した読書感想文の一部をキャプチャした画像。 “個人的には、「料理ができない女性=ダメ女」みたいに取れちゃう邦題がちょっと意地悪だな、と思いました。原題には "Culinary Novices(料理初心者)" という表現しかないし、ここに出てくる人たちは料理にエネルギー割いてこなかっただけで、そのほかの分野ではすごくがんばって生きてきたということがちゃんと語られていて、著者もぜんぜんダメ女なんてこと思ってない(だからこそ、生徒たちも素直にレクチャー受けることができてる)。翻訳書のタイトルは出版社側に権限があると伝え聞くので、翻訳者のかたには責任ないとは思いますが。”
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絲山秋子『神と黒蟹県』(文藝春秋,2023年11月)

日本のどこかにある、どこにあってもおかしくない架空の地「黒蟹県」を舞台にした連作短編集。なにかこう、いかにも地方自治体の「あるある」なのではないかというような、具体性と生活感のある描写が次々と出てきて、作り込みがすごい。各話の最後には固有名詞や方言の注釈も載ってます。

そしてそんな記述のなかに、いろんな姿で人々のあいだに紛れ込んで黒蟹県ライフを享受している「神」の存在がたびたび挟まってくる。この神さまは全知全能ならぬ「半知半能」の身なので、人間のフリをしていても、本物の人間との会話でしばしばズレを生じてしまったりと、なかなかに可愛らしいところがおありです。

異動で黒蟹県にやってきた1作目の主人公の前任者「雉倉」氏が再登場する6作目が、とても好きでした。黒蟹県での仕事を辞めて隣の棚元県にある実家に帰った雉倉氏と、彼に対しては、なぜか思惑どおりの顕現ができない神。その神が束の間、叶えてあげる雉倉氏のささやかな夢が美しくて、読んでる自分の実体験とは違うのに懐かしくて。楽しいのに儚くて。