#読書
川上未映子『黄色い家』(中央公論新社,2023年2月)
出版社ウェブサイトの作品紹介文に「クライム・サスペンス」と書かれているのを見て初めて「あ、区分としてはそうなのか」と気付いたくらい、そういう読み方をしていなかった。もちろん、言われてみれば、たしかにそういう話なんですよ。冒頭で40歳になっている主人公の女性は、かつて犯罪に手を染めていた。
ただその一方で、第2章以降で語られる回想のなかの年若い彼女は、ものすごく真面目で、金銭感覚が堅実で、責任感があって気持ちがやさしい。そして処世的には不器用で運が悪い。そんないじらしい女の子が、その真面目さと責任感ゆえに、どんどんやばいところに転がり落ちていく。
〔つづく〕