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遠田潤子『イオカステの揺籃』(中央公論新社,2022年9月)

薔薇を愛する優雅な完璧主義のマダムが、長男夫婦に男の子が生まれると知ったときから、だんだん異常さがにじみ出る言動を取り始めて、しかしそんな彼女にもひっそりと抱え込んだいびつで重い過去が――。

主要な登場人物すべてに、それぞれの地獄が存在しており、ものっっっすごく雑にまとめると「みんな家父長制の思想が悪いんや」みたいな結論にならざるを得ない。ここでは抑圧される者だけでなく、土壌に取り込まれて抑圧する側にまわるのも女性で、世代から世代へと続く連鎖のうねりが、思想上「立てられる/愛される」側にいる男性たちの目には見えづらい。たとえその男性がとても善良でパートナーに寄り沿う真摯な気持ちを持っていても。というかむしろ善良であるからこそ、ある地点から先には理解の及ばない領域がある。

生きる者が死せる者に対して勝者とも言い切れず、実は勝ち逃げされているのかもしれなくて、幸と不幸の判別も定かではないが、とにかくみんななんとか折り合いをつけてこれからも生きていくしかないんだという意思の力強さの裏には、拭い去れないしんどさもある。

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ツイッターではどうせ140字では無理だしって割り切って連続ツイートにしていたような内容を、せっかくだからと必死に500字におさめようとして、かえって悩みまくるようになっている……。