ちくま文庫2012年刊のもの。ファンタジーに比べると幻想文学のこと何も自分の言葉で話せないな…ということで、おすすめされてた入門書を図書館で借りてきた
澁澤龍彦らの幻想文学にまつわるエッセイと、シャルル・ノディエ、小泉八雲、ラヴクラフト、ロジェ・カイヨワによる評論を網羅した本。というか評論が七割。シャルル・ノディエの文章は200年前の浪漫主義擁護なので相当古い
収録作の中ではロジェ・カイヨワによる「妖精物語からSFへ」評論がいちばん読みやすく印象深かった。1960年代に書かれたもの
秩序とハッピーエンドを指向する妖精物語に対し、啓蒙合理主義を経た19世紀以降になって現れる幻想小説は、現実に生じる超自然という混沌/亀裂/恐怖を描いている…という論旨。まあカフカ『変身』ゴーゴリ『鼻』シェリー『フランケンシュタイン』etc、たしかに快挙に暇はない
そしてサイエンスフィクションは、高度に発展した科学の持つ幻想的なイメージ(日常的な体験を越えた知覚と不安)に端を発したもので、幻想文学の系譜上にある……という感じに話が続く
自作、ファンタジーと幻想小説とSFのどれなんだか分かんね〜〜と常々思っていたが、ちょっと腑に落ちた感じ もともとが近しい領域なんだよな
ただ、戦後20世紀のファンタジー文学(『指輪物語』『ゲド戦記』)がまったく触れられてなかったので、その辺をカイヨワがどう考えてたのかは気になる あと児童文学への言及もない、妖精物語と名指されてるのはペロー童話集あたりの民話っぽいので この区分でいくとアンデルセンはどうなんだ?とか色々と気になる
カイヨワ、名前だけ知ってて著作読んだことないから、次は単著も探してみようかな
あと一緒に借りてきてるトドロフの『幻想文学論序説』も読む
こちらは構造主義の立場から幻想文学をいろいろ語ったもので、批判含め後続に与えた影響が大きいらしい さてどんなものかねえ