#読書
松田青子『お砂糖ひとさじで』(PHP,2024年7月)
雑誌連載のエッセイをまとめたもの。タイトルはメアリー・ポピンズの映画の曲にある「お砂糖ひとさじで薬が飲みやすくなる」という歌詞から取られていて、苦手なことやつらいことのある生活のなかでも気持ちを上向かせてくれるような、日々のちょっとしたことがテーマ。
身の回りのこまごまとしたものやことに対する、それを選んだ経緯とか、どこがよいとかの語りは、必ずしも自分と同じような好みではないひとのお話でも楽しい。
ひるがえって、私ももっと自分の持ち物を長く愛せるような買い物をしよう……などと、決意を新たにしたりもするのだった。
またそんな素敵なもの嬉しいことの話題と並んで、タクシーで嫌な思いをした体験が報告される回があり、ちょっと異彩を放っている。でもそういった「怒り」をきちんと言語化しておくのも、自分を大切にするということだというお話に、納得するものがあった。直接文句を言えなくても、少なくとも自分のなかでは曖昧に流さず基準を持っていたほうがいいんだな。
これもまた、身に着けるものを意識的に選ぶのと同様のことなんだ。