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前野ウルド浩太郎『バッタを倒すぜアフリカで』(光文社新書,2024年4月)

約600ページの分厚さに文系人間としては腰が引けてたのですが、お正月ののんびり期間になってようやく手に取れました。読みはじめてしまえば、前作『バッタを倒しにアフリカへ』(2017年)同様、やっぱりとっても楽しい。

前作のときは論文発表前で詳述できなかった研究内容が、惜しみなく素人にも面白ポイントが分かるように紹介されています。フィールドワーク必須の研究の大変さも克明に記されている。たとえば大量のバッタを過酷な環境下で延々と解剖なんて苦行、私の想像の限界を超えている。そもそもバッタに出会えるかどうかから運だし。渡航が制限されるコロナ禍もあったし。

著者のフットワークの軽さ、臨機応変と創意工夫、情熱に任せて突き進んでいるようで論文執筆にあたっては大局を見てもいる冷静さ、そしてなにより、関係者たちとのコミュニケーションへの積極性。これが研究を充実させていくために大事なんだな、と感心しました。あと、額の大きい私費を投じるときの判断の速さと豪快さも印象的。なんというか、意欲と無欲のバランスがすごい。