#読書
森山至貴×能町みね子『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』(朝日出版社,2023年7月)
クィア・スタディーズという学問をご専門とする大学の先生と、文筆家でイラストレーターのかたの対談本。厳しく刺激的なフレーズがいっぱい出てきます。
ある言葉の意味が時代の流れとともに違ってきたり、あるひとの人生のなかでの自己認識が流動したりするのも実は当たり前であるこの世界で、自分を「不幸」だと言うひとに対して幸福を願うことすらも定義の押しつけであり傲慢であるのだとしたら、この社会に生きる者として、どんなスタンスでいればいいのか、ということを考える。
かつておこなわれた運動や、すでに廃れた用語などの解説を読むと、いまのこの分野の方向性も、後世では評価が変わっているのもしれない、とも思ってしまった。それでも私は、その動向に対してなるべくアンテナを立てておきたいのだ。ともすれば愚鈍なままでも寿命が尽きるまで逃げ延びられてしまうかもしれない、私のような者であっても。
理解なんていうのはおこがましいことだと分かってはいるけれど、ずっとそこに「いる」「いた」誰かを、知ろうとしつづけていたい。せめて。