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実生活上でとある懸念事項(ちゃんとした大人ならさほど悩まず対処できるのかもしれないが、私はちゃんとした大人ではないためとても不安に思っている)を抱えており、ずっとずっしり心にのしかかっているため、本の感想くらいしかここに抵抗なく書けることがない。

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伊藤人誉『ガールフレンド 伊藤人誉ミステリ作品集』(盛林堂ミステリアス文庫,2023年7月/底本:『ガールフレンド』東京出版センター,1962年)

今年1月に読んだ『人譽幻談 幻の猫』が面白かった伊藤人誉(人譽)の古い作品が復刊されていたので。

推理小説的なプロットで「普通の小説」を書くというコンセプトの連作短編集。事件っぽい感じのことは起こるし人死にもあるが、特に推理シーンなどはなく、わりとどの話も純文学っぽく(?)投げっぱなしで後味悪めに終わる。

主人公は次々と「女難」に遭うのだけれど、こいつもこいつで、この女性はなんかヤバいのではって、うすうす気づいていながら落とせそうと思うと安直に手を出しちゃったりと、なかなかに浅はかで志が低く下衆なため、あまり読者の心が痛まないのが作者の狙いどおりというところか。

ただ、私が生まれるより前の時代に書かれているので、この語り手の価値観が、どこまで意図して下衆なのかは、ちょっと分かっていないかもしれない。男尊女卑が現在より強かった頃の常識に照らすと、発表当時は、いま感じるほどには下衆くない印象だったのかもしれない。分からない。