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滝沢カレン『馴染み知らずの物語』(ハヤカワ新書,2023年6月)

フレッシュな言語感覚が評判の著者が、名が知れた既存の物語の「タイトルと少しのヒント」をもとに、自由に想像を羽ばたかせ綴った全15話。

そのヒントの「少し」って、どれくらい!? というのが気になります。微妙に元ネタ残っている感じのお話と、重なるとこきっぱり皆無なお話が混在している。ご本人が各作品にもともと持っていたイメージの強さが反映されている可能性もある?

この本は、一般的な商業出版物を読み慣れている人ほど、じっくり時間をかけて咀嚼することになるのではないか。少なくとも私はそうでした。

常日頃、この単語の次に来る単語はこれ、とオートマティックに先読みしてしまっているんだなってことが自覚できた。たとえば「たらふく」という副詞が目に入ったら、その文の続きには無意識に飲食系の述語を期待してたり。そういった惰性が、ここでは許されない。はしごを踏みはずすような感覚がある。

そして予断を打ち砕かれても、俯瞰的に文章全体を見れば情景としてはちゃんと脳裡に浮かぶし感覚としては理解できることに、感銘を受けるのだ。