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Shanna Swendson "Spindled"(Amazon Services International, Inc.,2020年4月)

世界が出口の見えぬコロナ禍の幕開けにどんよりしていた2020年の春、ステイホーム中の楽しみにと著者がブログで無料公開してくださっていた、2007年執筆の作品。タイミングによっては更新を見逃すことがあったため、連載途中で自費出版されたまとめ読み用の電子書籍版を買ったのですが、買ったら安心しちゃってずっと中断してました。

中断してたあいだに去年、東京創元社から『偽のプリンセスと糸車の呪い』というタイトルで邦訳も出ました。これから読みたい日本語派の人はそっちを買うといいと思います!

〔つづく〕

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〔つづき〕

あと、中断していた理由はもうひとつあって。邦題ではまさにそこがフィーチャーされていますが、ダブル主人公である少女たちのうちの片方が、そうしなければ自分の命を取られかねないとはいえ、自分を高貴な出自の者であると偽りながら周囲の信頼をどんどん得て、自分のためにほかの人に命賭けさせていく展開なんですね。この、真っ当な倫理観を持つキャラクターが罪悪感に苛まれつつ善良な相手に嘘をつき続けなければならないというようなタイプの話が、私はもともとかなり苦手で。とてもとても心臓に悪くて。

とはいえこの子は、ほかにどうしようもないのだし、得られた信頼自体は、この子の実力の成果なのだ。そしてこの著者だから、絶対に、こんな機転が利いてバイタリティがある勇敢で素敵な女の子に、後味悪い結末をもたらしたりはしないはず。そう思って今月ようやく一念発起し、病院やお役所の手続きの待ち時間にこれしか読むものがないという状況に自分を追い込むことで見事読了したのでした(そこまで……)。いちばんしんどかったところを無事通過してみれば、あとはさくさく進んで面白かったです。

〔つづく〕

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〔つづき〕

同じ日に16歳の誕生日を迎えた親友同士の女の子ふたりの、おとぎ話がリアルになってる異世界での冒険。片方がうっかり眠り姫にならないようずっと匿われてきたプリンセスなんだけど、悪い魔女はそうじゃないほうの子を捕まえてしまい――。

間違われたほうのルーシーが、本当にがんばる。限られた手札を最大限有効に使って、助けに来てくれた正義の騎士をむしろ助ける勢いでがんばる。一方、本来の姫君ドーンはといえば、なにも知らされず純粋培養で育ってわけもわからずやってきた異世界で、善き魔女たちから出生時に与えられた歌唱力をほぼ唯一の武器として五里霧中状態を切り抜けていく。どちらの奮闘もいとおしい。

〔了〕