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Campbell, G., 'Lucretius Empedocles and Cleanthes', in M.Garani & D.Konstan(eds.), The Philosophizing Muse, Cambridge Scholar Publ., 2014: 26-60.

エピクーロス自身が「哲学を語る手段としての詩」をあまり肯定的に評価していなかったことを考えると,哲学を詩で語るルクレーティウスはこの点でむしろストア派の詩論に接近しており,そこには詩的・哲学的典拠の混淆がある.

その上で第1巻冒頭のウェヌス讃歌に焦点が当てられる.ここでルクレーティウスがストア派のクレアンテースの『ゼウス讃歌』を模倣していることは従来の研究が示していることだが,著者は其処に更にエンペドクレースとの関わりをも見出そうとする.
エンペドクレースがヘーシオドスに反発して「ウェヌスの支配する黄金時代」を描いたことを念頭に置けば,クレアンテースにはヘーシオドスへの回帰という側面があり,彼を模倣しつつ批判したルクレーティウスのウェヌス讃歌がエンペドクレースに負うところの大きいことが示される.