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Farrell, J., 'Philosophy in Vergil', in M.Garani & D.Konstan(eds.), The Philosophizing Muse, Cambridge Scholar Publ., 2014: 61-90.

ウェルギリウスの詩に哲学的要素が読み取れることは古代から知られていた.
古註家たちは詩人がエピクーロス哲学を信奉していたとかそこから徐々に離れていったといった説明をウェルギリウスの生涯と結びつけて語っているが,明確ではない詩人の生涯と思想遍歴を関連づけて論じることには困難があり,この論文ではむしろ作中で用いられる哲学的モチーフがどのように変化しているかに着目して分析が行われる.

『牧歌』においては散発的にしか窺われなかった自然哲学が『農耕詩』では根本的な主題となっていて,ここでの詩人の眼目が,エンペドクレースやルクレーティウスとは異なり特定の学派にコミットせず折衷的なアプローチにより「哲学的に理解されうる詩」を書くことにあったという指摘はなるほどと思わせる(pp. 76-79).

13:53:47 @ncrt035@gnosia.info
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付録としてピロデーモスとウェルギリウスとの関係についての簡単な議論がある(pp. 88-90).1989年に発見されたピロデーモスのパピルス断片にウェルギリウスへの呼びかけがあることからこのヘルクラーネウムのエピクーロス派と詩人との関わりが予想されるが,ウェルギリウスとエピクーロス哲学との関わりの詳細については依然として謎が残るし極端な結論を導くことはできないと注意が促されている.