13:00:26 @narano@mstdn.jp
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安野モヨコ『還暦不行届』(祥伝社,2023年11月)

漫画家である安野先生が、庵野秀明監督との生活を綴ったエッセイ集。

2005年の『監督不行届』では、それぞれ自分の世界を持っているふたりが夫婦として仲良く一緒に暮らす、驚嘆に満ちた日々を楽しく垣間見させてもらったのですが、あれから18年。

やっぱりいまでも監督は安野先生にとって、興味の尽きない、愛おしく新鮮な存在。そして長年連れ添った現在では、お互い変わったところも歩み寄ったところもあり。

これを読むかぎりでは、現実処理能力が高く周囲を慮らずにはいられないのは確実に安野先生のほうなので、同じクリエイター同士なのに、先生だけがお世話係と「兼業」みたいになっちゃって、日々の生活面では、どうしても先生側に大きな負担がかかっている気がしてしまう。

でも巻末の監督インタビューまで読むと、そんな懸念は余計なことで、このおふたりのバランスはそれで取れているのかなあ、とも。もうね、「圧巻の伏線回収!!」みたいなインタビューだと思っちゃったんですよ。庵野監督もまた、創作者・安野モヨコの才能の、ストレートな理解者なのだ。

13:22:02 @narano@mstdn.jp
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砥上裕將『一線の湖』(講談社,2023年12月)

『線は、僕を描く』(2019年)続編。前作の最後の場面から2年後の物語。主人公の青山霜介は水墨画の修業を続けているけれど、そろそろ大学卒業後の進路も考えなくてはならない頃合い。

日本を代表する水墨画家のいちばん下っ端の弟子として会派運営の業務に駆り出されるうち、霜介は小1を対象とする水墨画教室を代打で任されることになる。奇遇にも、亡くなった母の職場だった小学校で。

前作を読んだときはまず、主人公がだんだんと知っていく水墨画の世界の視覚的な描写の巧みさに感嘆していたが、今回はさらに、絵師たちが筆を持って描くときの順を追った微細な動作や、それらの動作をおこなったり見ていたりする際の主人公の心の動きの丁寧な表現に、自身も水墨画家である作者の「門外漢にも鮮明なイメージを伝えるのだ!」という気概をとりわけ感じた。

実際に水墨画を極めていない身では、雰囲気を受け取ることしかできないのは承知の上だけれど、行き詰まりや挫折を経て自分の道を見出していく霜介をはじめとした門下の面々の、芸術家としての精神的な部分の言語化にも、引き込まれた。

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観たい美術展があるのだけれど、微妙に遠いので決心がつかないし、苦手な駅(この「駅」には「ダンジョン」とフリガナをつけたい)で乗り換えないといけないので余計に億劫だし……と、先月からずっとごろごろうだうだしていたら、お友達が電車の乗り換え段階から同行してくれることになった。

ありがとうありがとう、わたくしの文化的生活(?)は、周囲の人たちのご厚意によって成り立っています……。