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作者不詳『西遊記』(訳:武田雅哉/小学館世界J文学館,2022年11月)

あちこちで引き合いに出されたり創作物の元ネタになったりする『西遊記』、いつもなんとなくでしか分かっていなくて。ものすごく昔にダイジェスト版を読んだきりで、しかもその内容さえあまり覚えていない状態だったのです。で、これも児童向けの抄訳ですが、あらためて読んでみました。

昔うちにあったバージョンでは作者名が「呉承恩」となっていたはずだけど、本書の巻末解説によると、実際には長年にわたって書き足され改変されているため、特定のひとりを作者とは言えないというのが現在の考え方なのですね。

読んでるうちにだんだん思い出してきたエピソードもあり、「こんなんだっけ!?」ってなったエピソードもあり。

〔つづく〕

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〔つづき〕

三蔵法師の生い立ちとか完全に忘れてたよ。この人はけっこうお供たちに対してワガママなときあるよな。(私が言うなって感じだが)案外イメージしてたより人間できてない気がする! 観音菩薩はマッチポンプ。意図的に旅する一行を苦境に陥らせたり、そのくせ行き詰って助けを求めるとあっさり対応してくれたり。もちろん猪八戒はいい加減な信用ならないやつだし、孫悟空だって改心前がはちゃめちゃすぎて、旅への参加が確定した時点で「ほんとにこいつシャバに出しちゃっていいんですか」って言いたくなるレベル。でもみんな嫌いになれない。

さて2020年代になってからのこの新訳、すごく読みやすくなってます。セリフが非常に活き活きしているし、もとが詩文になっていたんだろうなってところは朗読してみたい調子のよさ。「パトロール」のような英語由来のカタカナ語が入るのは最初ちょっと引っかかったのですが、これもメインターゲットの児童たちには分かりやすいでしょう。

本文ではないけど、巻頭の登場人物紹介ページで観音菩薩が「三蔵法師の取経の旅をプロデュースする」と説明されていたの、かなりウケてしまった。観音P!

〔了〕

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抄訳とはいえいちおう『西遊記』のおさらいをしたので、これで安心して今月発売だった馬伯庸『西遊記事変』(早川書房)に着手できるはずだったんですが、うっかり500ページ超ある古泉迦十『崑崙奴』(星海社)を先に読みはじめてしまってな……(とても面白いです)。これも唐の時代の話だよ。