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白川紺子『龍女の嫁入り 張家楼怪異譚』(集英社,2024年11月)

中国の唐時代後期、元和2(西暦807)年。旅館の若き主人・張琬圭のところにある日、竜王の孫娘・小寧が、わりと強引に「嫁入り」させられてくる。生来の虚弱さゆえに幼少から大切に育てられたため、おっとりと鷹揚な性格である琬圭は、とりあえず子供を預かったような心構えで住居に迎え入れるのだが……。

体質的に怪異を引き寄せて厄介なことになりがちな琬圭の血筋の謎とか、小寧が人間である父親に対してうっすら抱く疑惑とかは、ずっと引っ張って続刊につなげるのかと思ってたら、本書が終わる前に読者にも当人にも真実が明かされてちょっと意外でした。ここで完結しても今後続編が出ても、どっちでも大丈夫な感じか。

人間の心の機微はよく分からないけど人間界の食べ物には興味津々な小寧がとてもかわいらしく、同時に純粋でいたいけで少し残酷で、とりわけ琬圭視点からはまさしく子供のようでもあります。しかしそれが本人の自覚としても、琬圭の認識においても、一方ではじわじわと、他方では鮮やかに変化していってふたりの結びつきが強まっていく過程がよかったです。