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新井素子『南海ちゃんの新しいお仕事 階段落ち人生』(角川春樹事務所,2022年12月)

通常は人の目には見えないがときたま事故を誘発する「世界の亀裂」に必ず引っかかってしまうため、わけも分からず転びまくりの人生を送っていた南海ちゃんと、その亀裂を「赤い靄」として視認できるが触れることはできない板橋氏が出会い、世の安全のため人知れずその靄を消していく使命のもとコンビが結成される。しかしその靄には、もうひとつ別の作用があり、それが圧倒的に健やかな精神を持つ南海ちゃんを尻目に、板橋氏を懊悩させる……。

個人的にはこれ新井素子作品でなければ受け入れられていないな、みたいな要素が山のようにあるんだけど、新井素子作品だから受け入れられてしまうのが自分でも不思議です。独特のまっすぐさが力業でねじ伏せてくる感じ。あとがきで著者ご本人もおっしゃるとおり、まだこの先も物語は続かないとおかしいので、続編もお待ちしています。