ある有名進学校は、生徒が勉強に集中できるように、細かい心配りで知られています。
教室のすべての机には、授業開始前に良く削れた鉛筆と消しゴムが準備されており、筆記用具を忘れてしまった生徒がいても、何も不便な思いをする必要がありません。
この学校の生徒Aは、このように便利な環境が与えられていることから、筆箱を持たずに投稿していました。生徒手帳には、生徒が登校する際には、心身を整え、筆記用具を持参し、常に勉強できる準備をすべきこと、と記載されていますが、実際にはいつでも筆記具が備えられていることから、Aのように筆箱を持ってこない生徒も多くいました。
ところがある日、事件は起こりました。その日は、進級にかかわる大事な試験が行われる日です。Aは、これまでそのような試験の教室にも筆記具が用意されていることから、筆箱を持たずに登校しました。ところが、試験教室に移動し自分の机に着席すると、自分の机にだけ筆記具がありません。Aは手を上げ、試験官を呼び出そうとしましたが、試験官は彼を無視して試験問題を配り始めました。そこで、Aは「すみません。机に筆記具がないのですが、貸していただけませんか。」と試験官に大声で話しかけました。ところが、試験官はAの机に来て、「あなたの筆記具はありません。貸すことはできません。」と冷酷に伝えました。Aはその解答が理解できず、繰り返し頼みましたが、試験官も「貸すことができない」の一点張りでした。その様子を見ていた周囲の生徒Bが、自分の筆記具をAに貸すことを提案しました。ところが、試験官はBをにらみつけ、「すでに問題用紙を配り終えたので、その後の物品の貸し借りはカンニングとみなす。貸した側も借りた側も、すべての科目を0点にする。」と宣言しました。
Aは当然あるべき筆記具が自分にだけないのはおかしいと抗議しましたが、試験官は「学校は、筆記具を教室の机に備え付けるという約束はまったくしていない。いつも机に筆記具があるはずだというのは、あなたの思い込みに過ぎない。」と言い、「もし白紙の答案を提出したいというのなら、今から教室の外に出ることを許可する。しかし、教室にとどまっている場合、静かにしていなければ試験妨害として処分する。」と告げました。Aは、あまりの事態に「鬼畜だ!」と叫びましたが、試験官は「私は鬼畜ではなく、人間です。」と冷ややかに述べ、試験を開始しました。Aは呆然として自席で黙っていましたが、10分ほどたったあと挙手して試験官を呼び出し、激しい憎悪に燃える目でにらめつけながら「白紙で提出します。」とだけ言い、教室から退出しました。