書いた文章は、
一次創作→カクヨム:https://kakuyomu.jp/users/poujiking
二次創作→pixiv:https://www.pixiv.net/users/86890303
でまとめています
なにとぞ
書き溜めたSSをまとめるクリップです
ご査証ください
https://nijimiss.moe/clips/01H63W9B49M8TH3W3FJ167NKMB
悼む春 | タチバナメグミ #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20326096
前書いた墓参り夏五を支部にぶんなげました
夏の逃げ水 | タチバナメグミ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20326020
ワンライで挙げた夏五小説です
どうか、幸せでいてください
そう言って、僕の彼女は消えてしまった。
前の彼女も、その前の彼女も。彼女未満の、気になっていた女の子も。隣の家のお姉さんも、従姉妹も、気難しい妹も。みんな、同じ言葉を残して、逝ってしまった。
僕が彼女たちを愛したからこんなことになってしまった、んだと、思う。この小さなセカイで、君と僕の恋は、愛は、世界の命運を背負い込んでしまった。そして、彼女たちを、えいえんがあるという向こう側に突撃させてしまった。
彼女たちが運命に特攻したあと、決まって骨が降り注いだ。一人の人間の身体にある骨量よりずっと多くの骨が降るから、きっとそれは特攻し死んだ彼女のものではないんだと思う(混ざって入るかもしれないけど)。僕は骨が降るたび街を歩き回り、肋骨を一本だけ拾う。それを持ち帰り、部屋の奥にしまってある木箱に収める。かちゃり、と、すでに収められている肋骨たちが鳴る。僕は、この肋骨たちを彼女たちの遺品とすることにした。向こう側にいって、骨も肉も涙も残らなかった彼女たちを悼むために、誰のものかもわからない肋骨を用意する。肋骨を詰めた箱を抱きしめるたび、僕は彼女たち一人一人を思い出す。この箱の中には彼女たちの誰一人としていないけど。僕は、この箱の、ここに詰め込まれた、誰のものでもない肋骨を通して彼女たちを感じる。
僕にとって彼女たちを感じるということは、結局のところ、彼女たちの感じた不安や寂しさや恐怖に思いを馳せることではない。彼女たちの怒りに共感することもないだろう。これはただ、あの日にあった恋心を追体験するための儀式だ。儀式だから、骨は本物でなくて良い。箱は棺でなくて良い。僕は、彼女たちを愛している。僕に、腐ることのない恋を残してくれるから。
かつん、かつん、かつん
骨がまた、降り出した。きっと、どこかで誰かが向こう側に行ったのだ。それは、少女かもしれないし少年かもしれない。老年かもしれないし青年かもしれない。そもそも、人ですらないかも。いずれにせよ、きっと、僕みたいな人間が誰かを愛してしまったということだ。
「どうか、幸福でいてください」
きっと、そう言われたのだろう。
「どうか、幸福でいてください。私の苦しみや悲しみが、私の命が、あなたの都合の良い解釈になりかわり、平べったい、美しくて無害な思い出になって、あなたの退屈を紛らすための慰めになるから。思い出を反芻することで得られるかりそめの快楽を幸福と拡大解釈してください。なるべく不幸でいなくていいように。私の命をそんなことのために使い果たすあなたが、不幸を感じるなんてあまりにも身勝手だと思うから。だから、どうか、幸福でいてください」
「わぁ」
綺麗な子。思わず声が出てしまうくらい。彼女はだらんと舌を垂らして木にぶら下がっている。ぎしぎし、と風が吹くたびに彼女が揺れて、木が鳴る。ぎしぎし。これはきっと彼女の声だ。ぎし、ぎし。美しい、と思った。
「イケメン」と騒ぎ立てられる同級生にも、「かわいい」と有名な先輩にも、私は一度だって「美しい」と思ったことはなかった。顔の造形が良いことは分かる、けど、美しいには全くもって足りなかった。美しさが分からないことに、孤独にも似た感覚を抱いていた。
私の脳は、やっと美しさを知覚した。美しさは、目の前にある。
ぎしぎし。歪んだ声で、彼女は私に語りかける。きっとこれは運命だ。
私は彼女に手を伸ばす。世界で初めて出会った、美しいあなたに。
今日の天気は秋です。昨日の天気も秋でした。明日もきっと秋でしょう。私たちの毎日は、秋です。昔は日本にも秋以外の春や夏や冬があって、それぞれ色彩豊かな景色が見られたといいます。けれど、私たちにはそれがありません。私たちの季節は、いつも、秋です。
秋は突然訪れました。歴史の授業では、秋は1月の雪の降る日の晩に突然現れたと習いました。日本列島の上空を覆った秋は、枯れ木のような声で、「自分は秋である」こと、「自分は冬のやつをここで待ち伏せしてやろうと思っている」こと、「冬がここにやってくるまで日本上空を漂わせてもらう」ことを一報的に告げました。当時の人は、さぞ混乱したでしょう。だって、昔の人にとって秋や冬はただの気象現象で、「秋」のように喋ったり、自分勝手に空を漂ってひと所に秋に閉じ込めてしまったり、そんなこと想像なんてしてなかったでしょうから。けれど、実際に秋は枯れ葉が擦れるような声で言葉を喋りましたし、こうやって日本を秋の真っ只中に閉じ込めてしまいました。
冬が来る合図は、木枯らしという風だそうです。木枯らしにくくりつけた紐をソリに繋いだ乗り物で、冬はやってくるそうです。
秋がどうして冬を待ち伏せしているのかは、だぁれもしりません。
だからわたしたちは今日もまた、冬を待ちます。木枯らしが吹いたらたちまち、冬が日本にやってくるでしょう。
本物勝ち猫さんを返せ!!!!!!!!!!本物勝ち猫さんは美少女アイコンになんてしない!!!!!!!!!!!返せ!!!!!!!!!!!!!!!
勝ち猫さんが美少女になってる?????????????????!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
書く習慣ってアプリで一時期SS量産してたんだけど、
あれ、1日でお題に沿ってSS書くから結構訓練になったな~と思ってる
遅筆なのはあまり変わらなかったけど
書き溜めたSSを放出してるんだけど、ずっと人生に悩んでて笑ってしまうな!!!!おい!!!!人生ってしんどいぞ!!!!!!!!!
空から降る白い雨は、雪と呼ぶらしい。雪は、今日も降っている。昨日も一昨日も、わたしが覚えている限り毎日絶えず降り続いているそれは、きっと、明日も降っているだろう。
「ぼすん」と降り積もった雪の上に右足が沈む。足は脛の辺りまですっぽり沈んでしまった。つい昨日地面を固めたばかりなのに、明日にはまた固め直さないといけない。降り積もった雪をそのまま積もるままにしておくと、いつか外に出た時に体の重さで埋まってしまう。だから、ある程度降り積もったら鉄のローラーを引いて回って、地面を固めておくのだ。雪は重さをかければ硬く固まってくれるから、こうしておけば人間一人の体重で埋まることはない。雪は溶けない。積もるだけ。積もったら、積もったまま。だから、家もすぐ積もる雪に埋もれてしまう。私たちは仕方なく、高くなる地面の嵩に合わせて家の高さも高くするのだ。私たちは、塔に住んでいる。きっと、昔より。それこそ、雪が降り始める前よりずっとずっと高い場所を地面と呼んでいて、ずっとずっと高いところに住んでいる。
雪がいつ降り止むのか、私は知らない。知る術もない。
私は今日も、外に出る。雪の降る白い世界を、生きる。外には、塔を高くするための、鉄が落ちているから。落ちてくるから。塔を高くするため、この世界で埋もれずに生きるために、私は今日も歩く。
ぼすん、ぼすん。
たまに、夢を見る。私が見たこともない、寝物語で聞いた昔の世界。
昔の世界には、雪は降っていない。もっと低いところに住んでいる。海、というところも、ある。そこで私は、鉄を探すこと以外をする。お父さんとお母さんも、塔を高くするために朝から晩まで危ない作業をしたり、泣いて暮らしたりしない。白くない、色々な色がある、景色。
でも、それは、夢だ。いくら夢を見ても、雪は降る。お父さんとお母さんは手を傷だらけにしながら錆びた鉄を針金で結んだぐらぐらする塔を作る。私は、毎日この白い景色を、孤独に歩き続けて、あるか知れない鉄を探す。鉄が見つからなければ、お父さんは私を殴り、お母さんは泣くだろう。塔を高くできなければ、わたしたちは雪に埋もれて死ぬだけ。
ぼすん、ぼすん。
この世界は、寂しい。
ぼすん、ぼすん。
ぼすん、ぼすん。
だから、私は夢を見る。幸せな夢を。
「ずっとこのままでいたいな」
「あなたとこのまま繋がっていたい」
「だいすき」
「あいしてる」
「やっと、あなたとこうして繋がれたの」
「離れ離れになんてなりたくないな」
「もうずっと、明日なんて来なくていい」
「恋人になるとか、結婚するとか、じゃなくて。その先の、ずっと遠くて、深いところ。私はあなたと、そこに行きたかった」
「繋がったまま、生きていたい」
「私の夢は、今日、叶ったの」
「愛してる」
「わかるかな?あなたの血が、私の血になるの」
「あなたの心音がわたしの心音なの」
「この痛みも、膿も、腐りも」
「軋む骨も、わたしのものであり、あなたなの」
「一緒に生きて、一緒にいる。病める時も、健やかなる時も」
「全ての瞬間を、あなたと共有するの」
血溜まりが広がる。いくら縫い合わせても、腑は、血は、溢れ出す。断面から爛れ、膿み、虫が湧く。体はいつか腐る肉塊でしかない。心は、脳が見せる幻想でしかない。けれど。愛はここに確かにある。わたしの腹に縫い付けたあなたの身体を抱きしめる。あなたの身体はもう生きていない。あなたの心も、きっと動きを止めてしまっただろう。抱きしめる腕に力を込めるほど、腹から血がぼたぼたとこぼれる。愛は、この傷みだ。この愛は、この傷みだ。
「あいしてる」
この傷みを、愛している。
私たちの生きる世界にも、朝というものがあり、昼というものがあり、夜というものがあります。太陽に似た何かがあり、それは、登ったり沈んだりします。太陽に似た何かが地平線の向こうに顔を出すことを、私たちはあなた達の言葉を借りて「日の出」と呼びます。
日の出が来ると私たちは太陽に似た何かに向かって攻撃を仕掛けます。あるものは突撃し、ある者は遠くから錆びついた狙撃をします。太陽に似た何かの反撃により、突撃部隊は熱に焼かれ一瞬で灰になります。狙撃部隊もまた、太陽に似た何かから伸びてくる大きな手に潰されてぐちゃぐちゃになります。たくさんの私たちが一度の戦いで死にます。私たちの生命サイクルは人類のそれより早く、単純ですから、死んだ側から同じ数生まれてきて、すぐに戦線に赴きます。
私たちにとって、太陽に似た何かとの戦いは存在をかけた大決戦で、最優先事項です。命や「私」という個の思想は、あなた達人類が思うよりずっと価値が低いのです。だから、死ぬことは、怖くありません。あの光の塊によって灰になったり挽き肉になったりすることは、私たちにとって勇気ある者の証であり、誇りです。
それに、太陽に似た何かも、無敵ではありません。殴りつけられればばきりと音を立ててヒビが入りますし、剣で切りつければ血も噴き出します。以前、狙撃部隊がぶち当てた砲弾が光球の真ん中近くに大穴を開けた時は耳をつんざく酷い悲鳴をあげていました。それがとても愉快で、私たちはいっとき戦いを忘れてけらけらと笑い声を上げてしまいました。
この戦いは、決して、私たちの敗北が決まりきった戦いではありません。不利ではありますが、確実に太陽に似た何かを日々追い詰めているのです。それでも、あなた達人類は、私たちの戦いを不毛なもののように感じるかもしれませんね。
私たちは、いつ来るかしれない、けれどいつか来る「日の入り」まで、私たちは何度も太陽に似た何かを拳で殴りつけ、剣を突き刺し、砲弾を浴びせるでしょう。静かな夜を目指して、私たちは死を積み重ねるのです。
太陽に似た何かの叫び声が聞こえます。私たちの断末魔を切り裂いて響くそれを、あと何度、私は聞くことができるでしょうか。
親愛なる人類へ。この手紙が届いているなら、どうか、私たちのことを忘れないで。今この瞬間も、あの光の塊に向かって死ににいく私たちがいることを、どうか、せめて、忘れないでいてほしい。それだけを、祈ります。
SR :どうの音
SR :ふうの音
R :るうの音
R :ぬうの音
R :ぬうの音
R :ばうの音
R :わうの音
SR :ぷうの音
R :ぱうの音
R :6の音
#10連回してもぐうの音も出ない
▼ぐうの音を出してみる
バンギャの血が流れているので、暗くて狭い空間に人間が集まってやることはモッシュしたり頭ぶん回したりするくらいしか思いつかないわ
さっきのやつ、普通に縦書きで連れてかれてるのか内容で連れてかれてるのかわからん
もっとわかりやすくやれば良かった。俺は鍛錬を怠らないオタク。常に上を目指す。
はぁ〜最近の
ついったー
かなり荒れてますね!
きょうは突然名称変更だなんて!
こ〜んなSNS抜け出して、新天地探すしか!
どこが自分にピッタリか悩ましいケド、
もしここが住みやすければ居着くのもアリ🦆
NTRビデオ職人も、時代に送れないように大容量ファイル送付用にクラウド契約してるし、刺激的な企画を立てるためにchat GPTに企画の相談とかしてるのかもしれん
「Twitterくんはさ、なってみる気、ない?」
「なるって、何に?」
「……Xに」
そう言ってイーロンはうっそりと微笑む。言葉の上ではこちらの意思を尊重した「誘い」のようではあるが、実際は強迫で、強要で、強制だ。ただイーロンは、私が自分の意思でXになることを望んだという建前が欲しいだけだ。
「ね、どうしたい?」
その言葉に私は頷くことしか出来ない。これから私が何を奪われ、何者になるのかは一つもわからないが、ただひとつ、今までの私ではいられないということだけは理解できた。
デカ犬、💩した後のケツを俺の足に乗せて座るな
デカ犬、オナラした直後に尻尾振って臭い拡散するな
デカ犬、トイレの時に悲しげな顔で人間を見つめるな
デカ犬、元気でいろよ
デカ犬、尻尾の振りもでかいので通り道にあるものを全部はたき落とすし、振り返って部屋が荒れてるのを見て「部屋荒れてるけどどうした?整理した方がいいぞ^^」みたいな顔する
尻尾で全てをはたき落としながら。
デカ犬、なんてったって自分のことをカワイイ仔犬ちゃんだと思ってる節がありますからね。
うちの扉はデカ犬が車幅分かってなくて無理くり体当たりして通ってたせいでぶっ壊れました。
そういえば、仕事でなんかやばいことやらかしたときって舌ビリビリするな
キュンとすると胃壊すので、たぶんトキメキとストレスの反応が狂ってる
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「Twitterくんはさ、なってみる気、ない?」
「なるって、何に?」
「……Xに」
そう言ってイーロンはうっそりと微笑む。言葉の上ではこちらの意思を尊重した「誘い」のようではあるが、実際は強迫で、強要で、強制だ。ただイーロンは、私が自分の意思でXになることを望んだという建前が欲しいだけだ。
「ね、どうしたい?」
その言葉に私は頷くことしか出来ない。これから私が何を奪われ、何者になるのかは一つもわからないが、ただひとつ、今までの私ではいられないということだけは理解できた。
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もうさ、月曜日くんは辞めたらいいんじゃないかな?頑張るの……
誰も責めないよ……
月曜日くんは十分頑張った、でも、ダメだった、それでいいじゃん
もう、さ
私と一緒に、二度寝、しちゃお……?
ポケモンスリープ、起きた後のポケモン撮影パートを眠い真っ盛りにこなさなきゃいけないのどうにかならんか…?と思いながらやってる
あれ、いつか絶対寝落ちする
ポケモンスリープ、せっかく仲良くなって肥えさせたカビゴンと突然の別れをさせられて泣いちゃったな
新しいカビゴンも相変わらず皿食うし
もうさ、月曜日くんは辞めたらいいんじゃないかな?頑張るの……
誰も責めないよ……
月曜日くんは十分頑張った、でも、ダメだった、それでいいじゃん
もう、さ
私と一緒に、二度寝、しちゃお……?
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イーロンを御冷ミァハ化した夢小説がこちら!!!!!!!!!!!!!!!
RE: https://nijimiss.moe/notes/01H4V5YA46RP9P16B45WB8CBJ6
「全部終わらせるの」
イーロンから久々に通話の通知が来た。突然のことだった。
画面の向こうのイーロンは長い髪を乱雑に纏めて化粧もしていない姿だったが、相変わらず目が覚めるような美人だった。線が細いのも変わらずではあったが、少しだけやつれたように見える。それもそのはずで、彼女は丁度買収したSNSサービスの対応に忙しなく働いているまさに渦中だ。1人の経営者として、そして技術者として、買収した(詳しくは知らないが、させられた、と言った方が正しいかもしれない)サービスは、利用者としての視点だけでは見えない大きな問題をたくさん抱えていたらしい。
「どうしたの、急に」
疲労が溜まらざるをえない状況ということは想像に難くないが、イーロンがこうして突然連絡をよこしヤケになったことを言うのは今までに無いことだった。
「全部、終わらせようと思って。あなたに一言伝えなきゃって思ったの」
「……疲れてるのね。睡眠と食事はちゃんと取れてる?」
「だから、ちゃんと繋がって、よかった」
私の言葉に答えず、イーロンは続ける。どうやら今日の彼女は、こうして一方的に話をしたい日のようだった。これは、たまにあること。面倒臭いけど可愛らしい、私の大好きな彼女の一面。
こんな時は彼女の話に相打ちを打つ役に徹した方がいい。
「ええ、ちゃんと繋がった。運良く私は今あまり忙しくないタイミングだし、話しましょう」
どうしたの? と先を促すと、イーロンは少しだけ口角を緩ませて話し始める。
「貴方は、今のTwitter、どう思う」
Twitterとは、先述したイーロンが買収したSNSサービスの名称だ。どう思う、と聞かれたが、下手に答えるべきではなさそうだ。
「なんて、聞かれても困っちゃうよね」
答えに迷っていると彼女は呆れたように笑いながら呟いた。
「インターネットなんて、みんなやめてさ。家族や友達と会話して、外に出るべきだよね。『書を捨てよ、街へ出よう』だっけ、貴方が教えてくれたの」
そうだ。劇作家だった寺山修司の著作だが、今やこのタイトルだけが一人歩きして、向上心だけが先走った中身のない人間が人々を啓蒙しようとする時に使われることがあり、誰よりも本を読み知識を蓄えた寺山だからこそ説得力がある言葉を、大して書を読まず知識の蓄えもない薄っぺらな啓発に使うことが己の薄さを露呈している、という悪口を、イーロンに滔々と語った夜があった気がする。なぜ、今さらそんな話を掘り返すのか。
「書は人間に叡智を宿してくれる。でも、インターネットは?SNSでくだらないやり取りや気持ちの表明だけして、何にも結実しない時間の浪費しかしないなら、インターネットこそ捨て去って、街へ繰り出すべきだわ」
――どうやら、彼女は相当疲れているらしい。
いつもより数倍も面倒なモードだと分かるや否や、どうすれば当たり障りなく通話を切断できるか脳が検討を始める。
「でも、人間は自分からインターネットを離れられない」
「だから、終わらせるの?」
私は、この通話を終わらせたくなっていた。が、イーロンには気取られないよう努めて冷静に返す。
「インターネットは、終わらない。暮しは、終わらない。世界は終わらない。だけど、インターネットを終わらせようとすることを終わらせることは、できるわ」
「何を言いたいの?」
「私はもう、それをやるしか方法がないと思った。一番、論理的に正しい選択だと思った。立ってひとつの冴えた選択」
イーロンは私の問いが聞こえないようなそぶりで話を続ける。対話を求めてきたくせに勝手に喋る態度は最初と変わらないが、少しずつ、言葉の端々にあった緊張がほどけて行っていることを感じた。イーロンの身勝手に付き合う経験を重ね、だんだんと彼女の感情の機微を見抜くスキルが身につくほど、自分に呆れ、そして同じくらい、彼女のことを可愛らしく思ってしまう。
「インターネットに存在する、秩序のない論争もくだらない炎上も、私の愛するものだった」
イーロンはかつて、誰よりもインターネットを愛していた。ミーム画像で著名人を煽っていた。喚くアンチ共を、叩けば鳴るオモチャのように扱っていた。論争と炎上の喧騒を誰より楽しむことができた。誰よりもこの公園でうまく遊ぶことができた。
けれど、変わってしまった。
いつからだろう。きっと、Teitterを買収したあたりからだ。いち利用者として遊んでいた公園の管理人となり、最初こそは歓迎されたが、彼女が行った全ては悪手と批判され、非難された。ともに公園で遊んでいた人々から礫を投げつけられた。イーロンは、変わってしまった。
イーロンは決してその心中を言葉にすることはなかった。彼女はインターネットを憎んでしまったのか。Twitterという公園に裏切られ、へそを曲げて、すべてが嫌になったのか。
内容のつかめない言葉の連なりではあったが、ひとしきり喋れたことに満足したのか、イーロンは画面の向こうで柔らかく微笑み、こちらを見つめている。
ふわり、と彼女の雑にまとめた髪の一房が揺れた。
――全部終わらせるの。
途端、いやな想像が頭をよぎる。
「あなた、いまどこにいるの…?」
イーロンはうっそりと笑みを深める。恐ろしい、と思った。
「不思議なこと、聞くのね……私はここにいるよ」
イーロンの背後の風景が揺らぎ、切り替わる。木漏れ日さす山林に。オーロラが降る夜空に。暖炉のあるリビングに。本が所狭しと並んだ書斎に。
「ここって、どこよ……」
画面から聞こえる音が、切り替わる。炎の中でパチパチと木が爆ぜる音に。鳥の鳴き声に。工場に響く機械音に。
「インターネット。私はインターネットにいる」
イーロンだけが変わらないまま、画面の景色が、音が、変化していく。すべての場所に、すべての音に。
「人々はもう、インターネットは辞められない。Twitterがなくなっても、instagramで Facebookでthreadsでmustdonで、人々は生き続ける。私だって、そう」
森へ、山へ、里へ、都市へ。農場へ、工場へ、教室へ。外へ、家へ。
「私もインターネットを辞められない。何度裏切られても、いくら罵倒されても、インターネットを愛しているから」
「イーロン、やめて。はやまらないで」
宇宙に切り替わる。宇宙には、音がない。静まり返る。イーロンは相変わらずこちらを見つめ、静かに笑っている。
「私はインターネットになる。いや、なった、の。秩序ない議論が、くだらない炎上が、ここにはある。真実も嘘も、同じ量だけある。私の体も、心も、やがてインターネットに溶けて消える。私は、イーロン・マスクは、インターネットで生き続ける。
私はインターネットになるの。
だから、ごめんなさいって、言いたくて。私がインターネットになること、あなただけには伝えなきゃって思ったの」
「そんな、どうして」
「どうして、かな。でも、こうすべきだと思ったから。インターネットから離れられないなら、こうするのが正しいと思ったの」
「だからって、インターネットになる必要なんて、なかった……」
「ごめんなさい」
「私を選んで生きていくことは、できなかったの?」
喉の奥から引き潰したような声が出て、ああ、やってしまった、と思った。
私とイーロンの繋がりは、互いが互いの杖になり支え合うようなものではなかった。海を漂流する、たまたま似た形をしていただけの救難信号。形を見せ合って、身を寄せ合って、なお、飢えて凍える二艘の小舟。互いを選び取って生きることは決してない、けれど居心地の良い二つの孤独。「選んでほしい」という欲が、やがてこの孤独を分かつものだと知っていたから、決して言葉にしなかった。のに、してしまった。選んで欲しかった、なんて、適わないことを。
「ごめんね」
イーロンの細く美しい声が虚しく響く。静かだった。イーロンの背後から痛いほどの無音が声を上げ、泣き喚く。これは決別だと理解した。最悪の決別だ。今すぐ泣きじゃくって、ごめんなさいと喚き立てたかった。小舟が波に揺られ離れていく。似た、けれども違う形をした救難信号が、海霧の向こうに消える。飢えが、寒さが、沈黙が、私の世界を埋め尽くす。
「さようなら」とイーロンの唇が動くが、声は聞こえない。沈黙。静寂。孤独。
音もなく、さいごの通信が切断された。
*
イーロン・マスクはインターネットになった。インターネットミームに、フリー素材に、なった。性差の議論を外野が揶揄するときに、炎上した投稿へのレスに、イーロンは使われた。
イーロン・マスクは、インターネットになった。
かつて彼が愛し依存したようにインターネットを愛し依存する人々の中で、生き続けている。それが良いことなのか、悪いことなのか、果たしてイーロンがそれを望んでいたのかは、もうわからない。インターネットは中庸で、多様だ。イーロンはもうインターネットに溶け出して、様々な人の解釈の中を揺蕩うだけ。
Twitterは、結局、死ななかった。今もなお、人々は思い思いに呟いている。それを眺めるたび、私は彼らに問いたくなる。イーロンは間違っていたと思う? 正しかったと思う? 彼女は、インターネットになったの。
頭が良すぎて、誰も彼女の手を取って引き止められなかった。だから1人で行ってしまった少女。
Twitterは壊れなかった。インターネットは壊れなかった。私の人生も、壊れなかった。何の致命傷にもなれないまま、彼女自身が壊れてしまった。
でも、これは彼女に限ったことではない。インターネットには、イーロンのように、何の致命傷にもなれないまま1人で壊れてしまった人たちが、揺蕩っている。彼らもまたインターネットの中でミームとして在り続けている。インターネットは、彼らの仮想死が溶け出した昏い海だ。最初から、そうだった。イーロンがいなくなって、やっと私はそのことに気がついた。
イーロンが消えて、私は彼女の後を継ぐように実績を上げ、のしあがった。彼女が生きていたらこうしたであろうことをし、経験し、学んだ。
モニタには文字と記号で埋め尽くされた景色が表示されている。これは、全てを終わらせるための呪文だ。私がイーロンに成り代わることで手に入れた技術と権限を全て注ぎ込んだ、魔法だ。
イーロン。これは、あなたのための、魔法の言葉だ。
このプログラムで人は死なない。インターネットも、壊れない。ただ、私が、人々が、インターネットになるだけだ。誰も死なないまま、私たちはインターネットになる。イーロン、貴方が行ってしまったところに、私たちも行くよ。きっと明日も変わらず日常が、論争が、怨嗟が繰り返すだろう。堆積した情報の泥に塗れて人々は生きる。でも、それは現実世界ではない。インターネットだ。インターネットが、次の生存の現場になる。
――それだけだ。
人差し指がキーボードをなぞる。重みは、無い。生殺与奪の質量も、尊厳の感触も、感じない。こんなものか、と思う。私たちの生活は、結局、何も変わらないのだ。
ふと、思い立ってスマートフォンを開く。見慣れたTwitterの画面。投稿フォームを開いて文字を打ち込む。
イーロン、貴方は見ているかな?
くだらないことを、貴方とずっと呟いていたかったよ。
投稿完了を見送るとスマートフォンを裏返し、モニタに向き直る。さようならは、必要ない。それはもう済んだ。エンターキーに載せた指を深く押し込む。
今はもう存在しない星が一つ、光った気がした。
体調一つで制御不能になる「私」に価値や意味を見出すの、逆に困難!という話がある
意味や価値は普遍に近いけど、「私」は普遍じゃないから。性質がかち合わないものを組み合わせるの、いつかその営み自体に限界が来る
伊藤計劃のこころというものへの冷たさ、生理とかで「心がめちゃくちゃ体に引っ張られてる!」という体験してるとすごくしっくりくるんだよな
心は臓器
虐殺器官は殺人衝動を脳の仕組みとして捉え、
ハーモニーはetmlとして感情を記載して、
伊藤計劃は「こころ」のあり様に対してかなり乾いた視線を向けているところが好きですわ。
彼自身の闘病生活もあり、体同様に「こころ」のままならなさを感じていたのかしら、と妄想してみたりしちゃいますわ。