こんな記事が。
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川上泰徳(中東ジャーナリスト)
【視点】なぜ、パレスチナ人はイスラエル軍の占領と戦うのか、という基本的なことを問うた、このインタビューは多くの読者に読まれるべきだと思う。
誰もが暴力を否定するだろうし、私もパレスチナ・イスラエルを報道してきたジャーナリストとして、暴力による解決はないと考える。しかし、暴力の根源は、イスラエル軍による軍事占領という日常的な暴力であり、ヨルダン川西岸とガザ、東エルサレムの占領地で、住宅破壊、入植地建設、封鎖、通行規制、道路遮断、水源破壊、樹木伐採、不当拘束などという様々な占領政策でパレスチナ人の生活を阻害し、土地から排除しようとしていることである。
イスラエルの「日常的な占領の暴力」を終わらせない限り、パレスチナ側から「反抗暴力」が起きるのは避けられない。バルグーティさんがガザの戦闘再開について「国際社会の反応からは、偽善を感じる」というのは、ガザだけではなく、イスラエルによるパレスチナの軍事占領を本気で終わらせようとせず、パレスチナの反抗暴力が起きたときだけ、「暴力」「テロ」と非難する国際社会に向けられたものである。
ハマスによる越境攻撃があったガザでは、イスラエルは1967年以来続く占領(包囲)に加えて、2007年以来、国際人道法違反の「集団懲罰」にあたる経済封鎖を18年間続けてきた。国連人権委員会も、欧州連合も繰り返し、ガザ封鎖の解除を求めてきたが、国連安保理を初めとする国際社会は、真剣に封鎖解除への圧力をイスラエルにかけることはなかった。
その結果、ハマスによる越境攻撃が起これば、米国、英仏独など欧州主要国、日本も含めての「西側主要国」政府はこぞってイスラエルの「対テロ戦争」を支持した。ハマスの越境攻撃がイスラエル市民を殺傷している点で戦争犯罪を問われることは明らかだが、ハマスの攻撃の背景としてガザの占領と封鎖というイスラエルが生み出している原因がある以上、「対テロ戦争」で解決できる問題ではないことも明らかだ。
以来、イスラエルは大規模な民間地域への攻撃を続け、ガザで子供1万8千人を含む5万人以上が殺害されているのに、「西側主要国」政府からイスラエルの戦争犯罪や暴力を非難する声は起きない。イスラエル軍によるガザ攻撃で、バルグーティさんがいう「あまりに重すぎる、ガザの人びとが払ってきた代償」について、「(攻撃を仕掛けた)ハマスの責任だ」という識者まで出てくる。
ガザでこれほどの犠牲が出ているのは「人質解放による戦争終結」を拒否して、攻撃を続けるイスラエルを、米国、欧州、日本が許しているためである。これはパレスチナ占領地全体で「占領からの撤退による紛争終結」を拒否して非人道的な占領を続けるイスラエルを許してきたのと同じ構図である。結局、パレスチナ人が戦わざるを得ない状況に追い込んでいるのは、私たちだということを知らねばならない。
https://digital.asahi.com/articles/AST4B4J6QT4BUHBI01YM.html