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伊藤人譽『續人譽幻談 水の底』(龜鳴屋,2008年1月)

1960年から2006年のあいだの8作品を収録。

全体的に、前に読んだ短編集『幻の猫』よりも、文章に官能的な雰囲気を感じるお話が多い印象。直截的な記述はそこまでではないのだけれど。最初に収録されてる「溶解」なんて、湖の水のようすが綴られるだけでもすでになんとなくなまめかしい。

そしてまたその一方で、非現実的なことを語る際にも、情景や人物の説明的な描写が的確というか、観察内容を過不足なく順序立てて伝達します、みたいな緻密さ冷静さがあって、それが独特な味になっているように思います。

最もボリュームのある2006年(著者93歳!)脱稿の書き下ろし作品「われても末に」は、淡々とした筆致の怪談でありラブストーリーでもある、技巧的な中編。

おそらくは認知症を患っている老婦人が語り手の、現実が妄想に浸食されてくるような掌編「落ちてくる!」(2003年、90歳)が本書ではいちばん好きかも。不気味さがありつつ軽妙。

〔つづく〕

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〔つづき〕

著者は1913年3月生まれなので、ご存命ならいま109歳なのですが、ネットで検索すると、2009年に95歳でお亡くなりになったらしいと書かれた個人ブログがありました(正式な報道などは発見できず)。単行本未収録の作品もあるようなので、どこかでまとまらないかなあ。

※『デジタル版 日本人名大辞典+Plus』(講談社)内には「伊藤人誉」の項目が存在しますが、没年の記載がありません(この辞典自体は、2015年9月に更新されている)
kotobank.jp/word/%E4%BC%8A%E8%

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伊藤人誉(いとう ひとよ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
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【八重洲本店フィナーレ・イベント開催のお知らせ】
yaesu-book.co.jp/topics/23781/

もともと出不精レベルが高かったのが、コロナ禍が始まってからさらに都会への遠征をしなくなってて、ずいぶん長いこと足を踏み入れていないのですが、八重洲ブックセンターのブックカバーと言えばこういうやつ(↓)だろ! という気持ちが強くて、「本店フィナーレに寄せて特別ブックカバー」をどうぞって差し出されても、いや、むしろ記念にするならさ……みたいな気持ちになりそう(そもそも長いこと足を踏み入れていないので、現在もこういうやつかどうかを知らんのですが)。

とは言うものの、土地の再開発が終わったら2028年竣工予定のビルに戻ってくるそうなので、特別は特別でゲットしておくといいものだろうか。

って、どうせ都会への遠征をしないので閉店までにあのあたりに行ける気がしないのですが。

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@deluxe_tokyo おお、懐かしいですか。ってことはいまはこういう花柄カバーじゃないのかな(最近ほんとにあのへんで買い物してなくて知らんのです)。

さっきアップした写真は、画像フォルダで発見した、2017年のもの。