現ナイジェリア地方イボ族に生まれ、1755年11歳で誘拐されて奴隷となった人の自伝。
奴隷船や西インド諸島で数々のひどい仕打ちをされたり目撃し、航海・戦争にも加わり、めちゃくちゃ有能な商売人にもなり、キリスト教にも目覚め、まさに波乱万丈という内容だった。
奴隷貿易廃止運動が高まっていたときに出版されたらしく、当時から出生や代筆が疑われてもいたようだが、描写がものすごく細かいし率直なので、あるにはあったことなんじゃないかなと思う。
>わたしはこれほど残忍で残酷な仕打ちができる人間を見たことがなかったし、それはわたしたち黒人に対してだけでなく、ときには白人同士でなされることもあったからだ。
>乗っているすべての人がわたしにとても親切で、それまで見てきた白人とは大違いだった。それで白人といっても、みんながみんな同じ気質の持ち主とは限らないと考えはじめた。
>なぜ彼らの妻はそんなに遠くにいるのか? なぜ自分の主人所有の黒人女性、とくに家内奴隷としていっしょに住んでいる黒人女性を妻にしなかったのか? 彼らの答えは決まっていた。──「主人が男の場合でも女の場合でも、女の奴隷を罰しようと決めると、その女奴隷の夫に鞭打たせるのです。それには耐えられません」
ちなみにその廃止運動も、自国で奴隷を調達できず競争力が低くなってしまったプランテーションからの文句が発端という話もある。人間ってやつは…。(人道的な理由の人もいたとは思うが)
色々ひっくるめて、『興味深い物語』としてはとても興味深かった。
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