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📚 ロブ・デサール+イアン・タッターソル『ビールの自然史』
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麦の遺伝子から水分子から人間の脳の構造から、ビールにすこしでも関係する要素全部深堀ったみたいな本だった。

大麦は二条・四条・六条の種類があり穂のねじれかたが違うという知識を得た。使う場面はない。ヨーロッパのビールは圧倒的に二条で、アメリカは六条が好きらしい。

水分子がほかの化合物との反応で引きちぎられずにいる平均寿命は千年くらいと試算されているとか、銀河系のアルコール分子を集めると度数100%の酒が10^28リットルになる話とかも。水分子のほうが多いのでアルコール度数は0.0005%だそうだが、意外とある。

体積比でアルコール度数2%は、飲む速さと代謝の速さが同じになるので酔わないらしい。パンもビールと同じ酵母が使われるが、高温になるのでエタノールはほぼ飛んでしまい、0.04〜まれに1.9%くらいになることがあっても、2%未満なので酔うことはないとのこと。

オーストラリアは昔18:15にバーを閉めなければならない法律があったそうだが、みんな減酒するのではなく終業後75分でがぶ飲みしたらしい。まあそうなるわな。

トラピストビールで非常に希少な「Trappist Westvleteren 12」というのがあるそう。飲んでみたい。

ホップジュースも飲んでみたい。

もはやビール関係ないが、進化についてのこの文よかった。
>生物は生存のために問題を解決したいからといって新しい有用な変異を簡単にひねり出すことはできない。生物の個体群は、遺伝子の突然変異というランダムなプロセスで自然に得られた変異でやりくりするしかない。さらに、進化には方向性があるとはかぎらない。1940年代から1950年代ごろには、進化とは少しでも好ましい状態へ向かってじわじわと進んでいくものとの考え方が広く受け入れられていたが、1970年代からは、進化の歴史には偶然の方が大きいとは言わないまでも、同じくらい影響していると認識されている。進化とはこのとおり気まぐれなので、人体のシステムも、工学的にみれば最適とはほど遠いのだ。

これも好き。意識は漠然とした感覚なのだ…(シナプスを介して全身に信号を伝え、体からの情報を持ちかえってくる仕組みについて)
>脳の内部では外界についての洞察をかたちづくり、意識があるという漠然とした感覚を生み出す──こんな離れ業がどうやってできるのか、だれにもわかってはいないのだが。

あと後半にあった、ビール銘柄を系統解析した系統樹がおもしろかった。

著者はアメリカ自然史博物館の学芸員で、『ワインの博物誌』も書いているそう。