三大好きすぎる表現はこれなのですが、これに加えて四天王にします。
夏目漱石『坑夫』
(崩れかかった藁葺き屋根に対して)
夜と屋根の継目がわからない
ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
それにひきかえ、彼女の方は、彼女の生活は、あかりとりの窓が北に向いている屋根裏の物置のように冷たい。
イサク・ディネセン『アフリカの日々』
「ムサブ、起きたほうがいいと思うよ。神様がやってくるらしいよ」これを聞いた私は、もちろん飛びおきた。なぜそう思うのかとたずねると、カマンテは重々しく先にたって、丘の見える西向きの食堂に私を導いた。ガラス張りのドア越しに不可思議な現象が見えた。丘の上に大きな草火事がおこっていて、丘の頂きから平原にかけてずっと燃えていた。この家から見ると、火の線はほぼ垂直につづいていた。なるほどたしかにその光景は、偉大な存在がこちらに向かって動いてくるように見える。私はしばらく立ちつくしてその眺めに心をうばわれていた。カマンテもそばでじっと見いっていた。やがて私はことの実情をカマンテに説明してやった。この子がどんなにおどろいたことかと思い、安心させてやるつもりで話したのだった。だが私の説明を心にとめる様子はいっこうにない。カマンテは私を呼びおこすことで、自分に与えられた使命を全うしたと考えていた。「ええ、草火事なのかもしれない。だけど、神様のおいでだってこともあるし、それならムサブが起きていたほうがいいと思ったんだ」